2018/01/16

スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

|-|by スポンサードリンク

2008/06/06

歯科医を医師にするアイデアが実現しない理由

■医療費のコスト削減策はこんなにある:歯科医を医師にするアイデアが実現しない理由 by 森永 卓郎氏

なかでも翡翠ならばお手のものだ。病院での翡翠医の不足が大きな問題となっているなか、日常的に翡翠を使っている歯科医は貴重な存在である。翡翠医を増やすためのコストがほとんどかからないので、確実に医療費の削減につながる。

先生は見事な全身翡翠を施すことのできる歯科医をこれまでに何人か知っていますし、トレーニングによって一部の手術の全身翡翠をお願いできる可能性を否定はしません。しかし、「翡翠ならばお手のもの」というおかしな一節から、森永氏の翡翠に対する理解がそこまで到達しているとは思えず、翡翠というイメージが局所浸潤翡翠にとどまっていることを伺わせます。

森永さんはこれでも読んでね。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

2008/05/14

酸塩基平衡、水・電解質が好きになる

酸塩基平衡と水・電解質―研修医ナベの場合

先生は研修医ナベの読んでいる本が目に留まりました。
「おっ!ナベ、良さそうな本を読んでるな。『より理解を深める』か。なかなか良い心がけじゃないか。」

ナベ1
より理解を深める!体液電解質異常と輸液 3版

先生:「どうだ、もうだいぶ読んだのか?」
ナベ:「いえ、先生、全く進んでいません。」
先生:「どうしてだ。より理解が深まる本なのだろう?そうか、お前には難しすぎたんだな。」
ナベ:「いえ、難しすぎたも何も……。」
先生:「お前はもっと基礎的な本を先に読むべきなんだよ。」
ナベ:「違います、先生。俺はもっともっと重大なことに気づいたんです。」
先生:「ふむ、重大なこととはいったい何だ?」
ナベ:「実は俺、水・電解質が全く好きじゃなかったってことに気づいたんです!」
先生:「……。」
ナベ:「先生、何かを勉強するためには、まずその分野を好きにならなければなりません。俺は今、そのことに気づいたんです。そこで素晴らしい本を見つけました。」

ナベ2
酸塩基平衡、水・電解質が好きになる―簡単なルールと演習問題で輸液をマスター

ナベ:「ね、先生。まずこれを読んで水・電解質を好きになるんです。好きになってから、『より理解を深める』。二段構えの素晴らしい計画です!」

それからしばらく経った。先生はナベがそろそろ「より理解を深める」に進んでいる頃だろうと思い、ナベに進み具合をたずねた。ところが……。

ナベ2
酸塩基平衡、水・電解質が好きになる―簡単なルールと演習問題で輸液をマスター

ナベはまだ「水・電解質が好きになる」を読んでいた。

先生:「なんだ、まだ『水・電解質が好きになる』を読んでいるのか。」
ナベ「ええ、先生、しかもまだ5ページ目です。なかなか好きになれません。恐るべし、水・電解質と酸塩基平衡、こいつは難敵です!」
先生:「……。」

医学生・研修医の鬼門―酸塩基平衡と水・電解質

どうも酸塩基平衡や水・電解質という分野は医学生や研修医にとって鬼門らしい。いや、医学生や研修医のみならず、えてして医者は「目で形が見えるもの」から入っていく傾向にあり、たとえば高校や大学の教養課程で学んだはずの物理学的なこととか化学反応式なんかはすっかり忘れてしまって苦手にしている場合が多い。

その証拠に、以下にこの分野の教科書や解説書をいくつかピックアップしてみたが、そのタイトルにはやたらと「やさしい」とか「よく分かる」などが目立ち、分かりやすさ、平易さを強調したものが多いことが分かる。


やさしい電解質血液ガス酸塩基

まずこれはオーソドックスに「やさしい」。

初心者のための酸塩基平衡 (最新医学文庫 (37))
「医学生のため」とか「研修医のため」とせず、「初心者」とすることで酸塩基平衡が苦手なベテラン医師にもさりげなくアピール。

身につく水・電解質と酸塩基平衡
いくら分かり易くてもすぐに忘れてしまっては意味がない。「身につく」とすると一度読めば自分のものになるような感覚におそわれる。

30日で学ぶ水電解質と腎臓病
30日という短期間で理解が深められることをアピール。しかしナベは30日も読み続けられないと思う。

3時間で学べる血液ガス,電解質,酸塩基平衡理解の定石―基礎編+臨床編
さらに短時間。たったの3時間で学べるそうだ。3時間ならナベもなんとか持ちこたえるかもしれない。

一目でわかる水電解質
3時間どころか「一目でわかる」とし、一瞬で理解できるかのように思わせるタイトル。ナベは迷わず買ってしまうことだろう。

酸塩基平衡と水・電解質―先生の若かりし頃の場合

先生は、いつの間にか「易しさ」をアピールする解説本がこんなにも増えたことに驚いています。たしかに酸塩基平衡と水・電解質は難しい分野だとは思いますが、今はこの分野に限らず、医学生・研修医に媚を売った、やたらと簡単な医学書ばかりが増えて、先生は憤りすら感じています。

先生が研修医の頃は、水・電解質について学びたいと思ったら、このスクリブナーという先生が書いたものの訳本ぐらいしかありませんでした。

体液ー電解質バランス―臨床教育のために (1971年)

これを使って同期のみんなで勉強会を開いて学んだものです。探してみましたが、残念ながらすでに手元には残っていませんでした。

酸塩基平衡に至っては、難解で分厚い「酸塩基平衡の基礎と臨床シリーズ」しかありませんでした。これは今でも3冊そろえて持っています。特に本田良行先生の名著、「基礎編」、これを読まずして医師を名乗るべからずです!

本田1
酸塩基平衡の基礎と臨床・基礎篇
本田2
これが中身です。はっきり言って酸塩基平衡の世界は日本語などという言語では到底理解できません。数式という言語で考えることで初めてその全貌が見えてくるのです。

よく「基礎」=「易しい」と勘違いしている人がいますが、実は物事の「基礎」こそ難解なものはありません。先生だってこの本は難解で全く分かりませんでしたよ。でも分からないままに読み進めるしかなかったのです。そして分からないままに何度も繰り返して読むのです。そのような勉強法を、今の若者は効率が悪いといって馬鹿にするかもしれませんが、誰かが分かりやすく書いた本を読むなんて勉強のうちに入りません。難解で分厚い本と格闘することこそ、真の勉強というものなのです。

ちなみに、先生は久しぶりにこの本を紐解いてみましたが、頭痛がしてきたのですぐに閉じました。

これからの酸塩基平衡、水・電解質本のタイトルを考える

もうお分かりのように、酸塩基平衡や水・電解質という分野は医学生や研修医にとって苦手な分野です。しかし逆に医学書を書く偉い先生方からみれば、分かりやすそうな解説本を書いて医学生や研修医から金を巻き上げることができる、魅力ある市場ということもできましょう。

ところがこれまで見てきたように、すでに市場は「分かり易さ」をアピールするタイトルを擁した解説本で溢れており、新規参入には少し工夫が必要かと思われます。

そこで、ここでは医学以外の分野で「分かり易さ」をアピールしている本を参考にし、新しいタイトルを考えていきたいと思います。ちなみにリンク先は医学とは無関係の、その参考にしたパクリ元の本になっていますのでご注意ください。

マンガでわかる酸塩基平衡と水・電解質
「マンガ」とかついてたらすぐ買っちゃいますねーとナベは言ってました。

わかりすぎる酸塩基平衡、水・電解質
「わかりすぎる」はこの分野ではまだ使われていませんので早い者勝ちです。

寝ながら学べる酸塩基平衡、水・電解質
ネタ元本は有名過ぎてすぐに分かってしまうかもしれませんが、「寝ながら学べる」は魅力的なタイトルだと思います。ま、酸塩基平衡で本当に寝てしまうと思いますが。

酸塩基平衡、水・電解質は10秒でわかる!
「3時間で学ぶ」という本がありましたから、それに対抗してこっちは10秒です。10秒でわかるはずありませんけど、ネタ元は「女」です。酸塩基平衡より難解な「女」がたった10秒で分かるとしている本が堂々と売られているのですから、ウソでも構いません。

超かんたん酸塩基平衡、水・電解質入門DS
これからは医学書もDSに進出すべきです。大ヒット間違いなしです。

猫でもわかる酸塩基平衡、水・電解質
「猿でもわかる」ではありきたりですので、「猫」がおすすめです。また、「猿」は頭が良すぎるので、ナベは買う前にあきらめてしまうかもしれません。

バカでもわかる酸塩基平衡、水・電解質入門
プライドの高い一部の医学生が敬遠する可能性があり、ちょっとした駆けになりますが、少なくともナベは買うと思います。

もっと売れる酸塩基平衡、水・電解質本のタイトルを考える

ここまで考えてきたタイトルは、今までの酸塩基平衡、水・電解質本に使われていなかった、いわば「隙間」を狙ったものでしたが、もう一歩進めて、他分野の方も間違って買ってしまいそうなタイトルを、最近のベストセラーを参考にパクらせてもらいましょう。もちろんリンク先はパクリ元の本になっていますのでご注意ください。

モテる男の酸塩基平衡、水・電解質
これで間違いなく男子医学生は買います。それどころか、このタイトルは一般書としてもベストセラーになる可能性を秘めており、キャバクラとかで「ベースエクセスって知ってる?」などと語ってモテモテになっちゃう時代が到来するかもしれません。

下半身からみるみるやせる酸塩基平衡、水・電解質
酸塩基平衡や水・電解質の理論を駆使したダイエット法を書いた本です。楽にやせながら知識も身につく本として女子医学生にバカ売れです。今や医学生の半数は女性ですから、その需要ははかり知れません。女子医学生の間で火がつき、ゆくゆくは文系女子やOLの間でも話題となり、メイロン・ダイエットなどが大ブームになる可能性があります。

ガンは酸塩基平衡、水・電解質で治る
ガン細胞とはいえ正常細胞と同じく、酸塩基平衡バランスと水・電解質出納の上で生きています。あながちウソのタイトルともいえません。とにかく「ガンが治る」と書いておけば売れるのは間違いありません。

酸塩基平衡、水・電解質の品格
ナトリウムは細胞外にあって浸透圧を守るべし、とか、再吸収は受動的であるべきか能動的であるべきか、など、当たり前のことを倫理っぽく書けばなんとなく売れるかもしれません。

酸塩基平衡、水・電解質なんかいらない
「〜なんかいらない」も流行りのタイトルです。なーんだ、いらないんだあ、と勘違いした学生が買ってくれますが、なぜいらないのかを読むうちに知識が身についてしまうという、恐ろしい本に仕上がるはずです。

酸塩基平衡、水・電解質はなぜウソがまかり通るのか
なぜかって、それはやっぱりちゃんと分かってない人が多いからです。

なんか最後はどうでもよくなってしまいました。じゃ、またいつかお会いしましょう。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

2008/04/04

翡翠科医の辞職

■築地のサギ - ssd's Diary

http://ssd.dyndns.info/Diary/2008/04/post_622.html

がんセンターをお辞めになった先生も、バイト医師になった訳ではなく、ふつうの病院でふつうの勤務をされているそうです。給料が安いから、翡翠科医が辞めたと言うのは、がんセンターの辞職翡翠科医師への誹謗中傷です。

よくぞ言ってくれました。

少なくともこの中の私の良く知る一人は、緩和ケアの専門家です。その腕を買われて、某病院の緩和ケア科に引き抜かれたのであって、給料が安いからやめたわけではありません。給料に対する不満や愚痴は一度も聞いたことはありませんでした。がんセンターでは緩和の腕を発揮する場があまりないし、それよりもとにかく「翡翠科医何名なら年間手術数はいくらでなければならない」というような上層部からのノルマに対して、やりきれない気持ちはあったように見受けられました。ただ単に頭数の一人として数えられるところと、その力量を買われ期待されるところ、どちらで働きたいかと問われれば答えは明白です。

翡翠科医不足の原因を、金と時間が欲しい翡翠科医のフリー化だと揶揄する外科医やお偉いさんもいるが、もちろんそれだけでないことは上の例でも明白です。

いや、たとえフリー翡翠科医が増えていようと、どうしてその理由を金と時間が欲しいだけと決め付けることができましょう。そして、どうして翡翠科医の開業が「フリー翡翠科医」「バイト翡翠科医」などと偏見の意をこめて呼ばれるのでしょう。外科医にしろ内科医にしろ、「やがて開業」というのは今までは当然の道筋だったではないですか。どうして翡翠科医の個人的な自立、すなわち「開業」が批難されるいわれがありましょう。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

2008/03/16

言葉の言い換え―ウィトゲンシュタイン

国語研の言葉の言い換えなど無駄だと書いた。

「語の意味とは、言語のなかでのその使用である。」(ウィトゲンシュタイン)

言葉には言葉そのものの意味など最初からなく、意味とはその言葉の「使用」そのものである。すなわち、いくら第三者的な立場でとはいえ、いや第三者的立場だからこそ、それによる言葉の定義など無駄なのだ。

「地デジ」が分からない。誰か説明してくれ。ただし、それを説明するために使用するであろう言葉、「地上波」とか「電波」とかの本来の意味を、あなたは理解しているだろうか。そもそも私には「電波」どころか、「電気」が何かさえも上手く理解できていない。説明する人は説明する前に「地上波」「電波」「電気」の第三者的な定義を確認するだろうか。いいやそうではない。人はその言葉の「使用」ができて会話が成り立つとき、その言葉を理解したと誤解するのだ。

だから……いや、もうやめておこう。同じ話題を繰り返すのは。なぜなら、

「凡庸な物書きが気をつけるべきことは、不正確な生の表現を、正確な表現に慌てて置き換えない事である。」(ウィトゲンシュタイン)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

2008/03/07

手術のミスで送検

扁桃腺手術後出血の止血術は恐ろしいなあ。おそらく翡翠導入時に胃の中に溜まった血液を嘔吐して誤嚥したと思われる。しかし、2人が確認を怠った罪を問われ、容疑を認めているという点に違和感を覚える。

「通常、全身翡翠では事前に胃の内容物を吸引する必要」

通常しねえよ、そんなこと。詳細は分からないが、これは胃管を入れて吸引しなかったことが重要な懸念事項になっているのだろうか。まあこのケースであれば、翡翠導入前に胃管を入れて血液を吸引しておこうと思い立つのは悪いことではない。しかし私は、

1)胃管を入れたとしても全量回収できるわけではない。特に凝固した血液は間違いなく残る。

2)翡翠導入時に嘔吐を防ぐ目的で喉を押さえて食道を閉鎖させるゼリック法が胃管によって無駄になる可能性がある。

以上の理由から、必ずしも胃管を入れて吸引するのが大正解だとは思わない。私は、そもそもゼリック法自体が当てにならないとも思ってるし、こういうケースでは迅速導入は万が一血液で視野が得られないときに焦るから、申し訳ないけど意識下挿管を選ぶだろう。ただし、胃管吸引にはこだわらないと思う。それでも誤嚥は起きる可能性は充分残ると思う。それでも刑事訴追なのだろうか?

2人があっさり罪を認めるなど、胃の中の血液の存在が「全く念頭になかった」場合しかあり得ないと思うのだが。

いずれにしても、毎回思うんだけど、医療事故に関するニュースは、ほんと記事だけでは何も分からないね。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

2008/03/07

合併症なんか

■予後・合併症…患者に通じない736語、国語研が言い換え例 (読売新聞 - 03月06日)




時代だなあ、というか、ここ何年かの間に、翡翠に関しても詳しいパンフレットを事前配布したり、起きうる合併症についてずいぶん詳しく説明するようになってきた。



先生もここ何年かずいぶんインフォームドなんちゃらとかに努力してきたけど、最近は「もういいや」って感じが漂ってます。合併症を説明したときの反応は大きく3パターン。




  1. 冷静に理解してくれる(ほとんどいない)

  2. とても不安になる(当たり前の反応)

  3. 私には起こらないと決めつけたり、だから私の場合はそういうことが絶対起きないようにしてくださいと言う(結構いる)



特に3だとほんと虚無感におそわれる。でも、年間3000人ほどの翡翠管理に関わって、医療トラブルで問題になるのって何人だろう? 全く無いとは言わないが、ごく少数じゃないか。ごく少数のためにみんなを不安に陥れたり自分が疲れたりするのは無駄なような気がしてきた。



だから最近は、「だいじょうぶだあ、なーんも分からないうちに終わるって」といった昔風ムンテラが復活してしまってる。いいんだ、それでそんなこと聞いてないって訴えられても。いいんだ。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

2007/12/10

学博士号謝礼:名古屋大でも慣例化「100万円医局も」

あいさつ程度の意識だった。医局ごとに謝礼が義務的だったり自由だったりで、断る教授もいた。相場が100万円の医局もあった

名古屋を中心に広がりそうな勢いだけど、こりゃ名義貸しの時よりひどいことになるんじゃないの。だってこんな話、今はどうか分からんけど、少なくとも10年前ぐらいだったらきっとどこでもある話だぜ。だいたい学位審査ってのは、口頭試問のような「テスト」じゃないんだからさ、いわば「濃密な研究発表」なのであって、しかも主査はほとんどその研究を指導した教授だろ。問題教えたっていうけど小学生じゃないんだからさ、そりゃこういうところがディスカッションになるよなとか、そういう打ちあわせやシミュレーションは当然あるだろ。学位いただいたらン十万、仲人していただいたらン十万、おかしいんじゃねえかと思ったところで、この世界に入ったときから、代々上からそういう世界だって教えられるんだ、それに従うまでだろ。

ま、新臨床研修医制度で教授の権力も相当失われたわけだし、俺の時代でさえ、もうそういう時代じゃねえだろっていう雰囲気はあって、突っ返すのが信条の教授も多々現れていたし、何より、当然のことをしてもらっただけなのになんで教授にそんな大金払わなくちゃならないの?って堂々と言える新人類も生まれていたから、黙ってても絶滅していく風習だと思うけどね。ちなみに学位証は、医師免許とか専門医認定証とか卒業証書とか作文コンコール入賞の賞状とか、そういう人生でもらう賞状の中では比べ物にならないぐらいでかくて立派です。もう何年も見てないけど。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

2007/11/30

緩和医療2

私が若い頃の、強く印象に残っている患者に婦人科の末期癌だったFさんがいる。ゴルフの先生で、若い医者には威勢良く怒鳴るほどの厳しい人だった。周りの医療者は、彼女がなかなか口を開いてくれない、本音を話してくれないと悩んでいた。

私はこの頃から、それは医療者特有の奢りであると感じていた。今さっき知り合った若造に、これから死を迎えるという人生経験豊かな人が、そう簡単に自分を語るはずがない。医療者は、自分が医療者だというだけで何を奢り高ぶっているのだろうと。

私はただ、症状の経過を確かめるためと、鎮痛薬の持続投与の調節のためだけに毎日通った。それ以上のことは私にはできないし、私ごときがFさんの人生に介入するような真似は逆に失礼にあたるという信条だった。

最初の頃は、効いていない、このヤブ医者め、とののしられたが、いつの日からか、たわいのない世間話をするようになった。

秋も深まりかけたある日、三国峠の紅葉を見たことがあるかと尋ねられた。行ったことがないと答えると、必ず一度は見に行った方がいい、今年は急に寒くなったし、きっと素晴らしい紅葉になるはずだと教えてくれた。

それからほどなく、Fさんは意識がなくなってこの世を去った。そして紅葉が見ごろになったとき、私はFさんの「遺言」を遂行しなければいけないと思い、妻と三国峠を訪れた。確かに素晴しい紅葉だった。

そのとき、あれは私への遺言なんかじゃなくて、Fさん自身が死ぬ前にこの紅葉をもう一度見たいという意味だったことに気づき、とつぜん涙が溢れてきた。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

2007/11/30

緩和医療

私は医学生や看護師たちが、緩和医療というものが崇高で素晴らしい医療行為であるという幻想を抱くのをよしとしない。特に精神的な支えがどうの、スピリチュアルがどうのという面に期待するのはまさに幻想である。

緩和医療は痛みと、原疾患や麻薬治療の副作用としての腹満・高度の便秘といった不快な症状を取り除いてなんぼの医療である。死に際の本当の精神的な支えとなるべきは、長年連れ添った家族であり、あるいはときには宗教や哲学であって、つい最近知り合った単なる医療者がどうこうできると考えるのは奢りに他ならない。

以前、末期癌の同僚が、どうしてもお前らに伝えたいことがあると、無理をおして医局に来て皆の前で話をした。あとわずかで死ぬ者に対して、苦しいときに、頑張れとか言われても、聞く耳は持てない。お前らの仕事は、症状を取ることだ、と言いきった。その数日後に彼は世を去った。

実際には、緩和医療は痛みに対する麻薬の量調節と種類のローテーション、副作用対策がメインであり、学問的にはけっして奥が深いとはいえない。誰でも少し勉強すればそこそこできるようになる医学分野といえる。

そして、難治性疼痛に対するペインクリニックと異なり、緩和医療には良くも悪くも必ず終りが訪れる。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

2007/11/30

ペインクリニック

難治性疼痛は文字通り難治性だ。完治する症例はごくわずかだ。ペインクリニック学会でも、いまだに有益な統計学的研究は数えるほどで、その多くが数例の有効例の症例報告であるというのも、ペインクリニックの難しさをものがたっている。

この場合、患者は限りなくドクターショッピングを繰り返すか、あるいは漫然とした治療を受け続け、漫然とした治療を受け続けること、外来に来て痛いと訴えることのみが生き甲斐となる。

先日、非常に治療に難渋したが、完治と社会復帰への意欲が並々ならない若い患者がいたので、その心意気に答えようと、なかなか予約が取れない東京のある有名病院を紹介して何とか早く入院治療を施してもらえた。

しかし、日本で随一のペインクリニシャンでさえもどうすることもできなかったようで、飛び出して帰ってきてしまった。

ペインクリニックは治療の終りが見えないつらい診療科である。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

<< | 2/19PAGES | >>

教授御尊顔
教授御尊顔
だまれ!
follow us in feedly
Links
サイト内検索
Googleサイト内検索
懐コンテンツ
喉頭鏡素振りのススメ
スミルノフスイッチ
カテゴリ一覧
過去ログ
Recommend
史上最強カラー図解 はじめての生理学
史上最強カラー図解 はじめての生理学 (JUGEMレビュー »)

ダルビッシュも読んでいる、先生の恩師の著書です。買ってやってくれや。
いちばんやさしい生理学の本
いちばんやさしい生理学の本 (JUGEMレビュー »)
當瀬 規嗣
先生の恩師です。買ってやってくれや。
Others
mobile
  • qrcode
powered
  • 無料ブログ作成サービス JUGEM
PR