2009/06/03

奇跡の脳

奇跡の脳
奇跡の脳 新潮社

1年くらい前だったでしょうか。先生は飛行機の中で何気なく手にした機内誌の中に、竹内薫がジル・ボルト・テイラーの"My Stroke of Insight"を訳している最中だという記事を見つけました。それからずっとこの本の刊行を心待ちにしてたのですが、他に読んでいる最中の本がいくつかあったので、すっかり読むのが遅くなってしまいました。

話がそれますが、他に読んでいた本とは、シモーヌ・ヴェイユ、スーザン・ソンタグ、須賀敦子の著作や関連本です。ジル・テイラーも含めてみんな女性です。なんか最近の先生は女性の著作ばっかり読んでいます。どうしてなのかはよく分かりません。

「奇跡の脳」の内容は竹内薫の記事やNHKの特番である程度知っていました。中でも先生が衝撃を受けたのは、「時間が流れている」という感覚も、「私のからだの境界」という感覚も、脳の中で作り出された概念に過ぎないということです。もちろんそんなことは先生だって、ずっと前から頭の中では考えていましたよ。でも脳出血で左脳機能を現実に失っていくひとりの脳科学者の「体験談」は、凡百の理論書よりも圧倒的な迫力を持って語りかけてくるのです。

右脳人間となった彼女が「自分の境界」を失い、自分が世界とつながっているような「多幸感」に包まれ、元に戻りたくないとさえ思ったことは非常に興味深い。ですが先生は、むしろ彼女が左脳機能の回復とともに感情の起伏などを「他人や外部のせいにすることが自然に思える」ようになったとき、そのときにふと気づいた「感情はからだの中の感覚であり、自分の脳以外には誰も何かを感じさせる能力などないのだ」ということに感銘を受けました。

これは、コアな読者ならご存知の、先生が以前某所で書いた次の言葉にもつながると思いました。

どうしようもなくつらいとき、自分は本当につらいのだろうか、つらい自分を演じているのではないだろうかと、一度自分を疑ってみるとよい。少し楽になっただろ。

本当の幸せはあなたの中にあります。

彼女はその感情が90秒以上続いたとき、それは左脳がその感情を選択したのだといいます。

そしてまた、この自分の脳の存在のさとりは次のことと無関係ではないと思います。

彼女は左脳機能を失ったときの多幸感を、前半では「神の宿る右脳」といっていますが、後半では「ニルヴァーナ(涅槃)」と表現しています。先生は彼女の宗教的バックグラウンドを知りませんが、西洋人から突然仏教用語が飛び出すことは意外に思えます。おそらく「自分が宇宙とひとつだ」という感覚が、創造主としての人格神よりも、涅槃や「さとり」によりマッチしていったのでしょう。

彼女はずいぶんと左脳の悪口を言っていますが、先生には愛情のこもった悪口に思えました。なにしろ彼女は再び左脳機能を取り戻すことを選択し、私たちにその体験を伝えるために帰ってきたのです。もし左脳の悪口が書いてあったとしても、それは左脳の仕業なのです。

最後に、先生は今、ただ微笑むことしかできない人や、ただうめき声をあげることしかできない人と関わることが多いのですが、彼らにも彼らの世界が存在するのだという思いを強くしたことが収穫でした。それと驚くのは、彼女は倒れてから自宅のリハビリに入るまでの5日間、血腫除去術を受けてからの5日間、こんな大病なのに合計わずか10日間しか入院していないことです。さすがアメリカですね(いろんな意味で)。

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2008/05/05

国境を越える海ゴミ

■舳倉島診療日誌

野鳥で超有名な舳倉(へぐら)島は私の憧れの島です。小さな島の診療所にたったおひとりで赴任された先生のブログ、徐々に腕利きのバードウォッチャーになっていかれる様には少々嫉妬してしまいます。

■舳倉島診療日誌 島の清掃作業

海岸の清掃作業、お疲れ様です。ひっそりと楽しませていただいているのですが、この外国語が書かれたゴミを見て、ちょっと思い出したので書いときます。

■スミルノフ教授公式ウェッブサイト:海の向こうから来たゴミ

ご覧のように、私も4年前に日本海側のゴミを見回り、どうしてこんなにハングル文字が多いのか疑問に思いました。その謎は、この本を読めば大方明らかになります。

本書に書かれた驚愕の事実のひとつは、こうした海岸のゴミの約8割が実は「陸上由来」だということです。その辺にポイ捨てされたゴミ、カラスがゴミ袋から撒き散らしたゴミ、陸上のゴミはやがて雨風に流されて水路や川に落ち、そして最終的には海に出て「海ゴミ」となります。海ゴミが海に捨てられたゴミとは限らない、というよりも大部分が陸上由来なのです。

そしてもうひとつのポイントは、「ゴミは国境を越える」ということです。日本には海流の関係で、韓国や中国からのゴミがたどり着きますが、逆に日本のゴミは太平洋に流出し、ハワイや米国西海岸などへ到達しているはずです。

実際に、自国のゴミが日本に到達していることを知った韓国の学生などのボランティアは来日して清掃作業を行ったりもしているそうです。

■対馬の海岸清掃に釜山の大学生200人が参加

■JEAN ::: www.jean.jp :::

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2007/04/18

先生、巨大コウモリが廊下を飛んでいます!

動物行動学・人間比較行動学の小林教授の著書であるが、こんな教授が実在するなんて、先生はもう完敗だ(スミルノフ教授なんてのを無理して演じているのがばかばかしくなってきた)。捕まえたり保護した野生動物を「教授が喜ぶ」といって持ってくる学生たちと、それから始まる騒動を中心にしたエッセイ集。それだけでいかに学生たちに慕われているかが想像できる。文章は軽快で、まるでユーモア系のテキストサイトのようだ(ところどころ太字なのがフォントいじりを連想させる)。

小林教授の思索の対象は動物に終わらず、その動物に対する学生たちや教授自身の反応・感情にも及ぶ。なんと自分自身も研究対象なのだ。そうしていつのまにか動物行動学が自然と人間行動学に発展していることに気づかされるのである。

もし先生が今高校生なら、ぜひともこの大学を目指したい。いや、全国の教授と呼ばれてる人たちこそぜひ読むべきだ。全国の教授諸君、君たちはまだ少年の心を失わずに保っているかい?

さて、話がまた「うんこ臭」に戻って申し訳ない。これまで先生は「うんこ臭」に対してどうしても生理学的なアプローチをしてしまいがちだったけど、小林教授が動物行動学・人間行動学的に考察するとこうなる。長い引用にはいささか罪悪感がつきまとうが、ぜひ皆さんに読んでいただきたいという熱意の表れということでご容赦願いたい。

余談になるが、「臭い」というのは、あくまでわれわれの脳がつくり出した感覚にすぎない。たとえば糞を餌にする糞虫にとってはそれは「臭い」ことはない。ではなぜわれわれの脳は、糞から発散する物質を鼻の感覚器で受けとると「臭い」という感覚を生み出すのであろうか。

それは、「臭い」という感覚が生じることが、われわれの生存に有利だからである。というのは、糞の中には、われわれが吸収すると病気になるような病原菌がたくさん含まれているからである。だから、糞からわれわれを遠ざけるような感覚を生み出すことが得策なのである。

体内の水分が不足すると「のどが渇いた」という感覚が発生し、それによってわれわれは水分を飲もうとする行為に移るのと同じことである。

そんなことを考えながら、糞尿の掃除をすると、臭さがそれほど不快ではなくなる。一度、試していただきたい。

参考リンク:
■鳥取環境大学・環境政策学科教員一覧
■中日新聞・東京新聞 書評『 先生、巨大コウモリが廊下を飛んでいます!』 小林 朋道 生物に魅せられる学生たち
■動物との珍事件紹介☆小林朋道さん-マイタウン鳥取

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2005/11/01

鈴木貴之

鈴木貴之って誰よ

先生は今日、祖国のスーパースターについてのこんな本が売れていることを、北陸の地元紙で知りました。すごいなあ、大泉君。つーか、鈴木貴之って誰よ?社長!知名度まだまだっすよ。

鈴井貴之編集長 大泉洋
鈴井貴之編集長 大泉洋

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2005/03/17

アマゾンでタイトル作成3

■ amaztype

ザイーガとかいろんなサイトで紹介されまくっちまってるamaztypeは、入力した文字をそのアマゾン検索結果のサムネイルで描いてくれ、しかも商品へのリンクにもなるという凄いフラッシュなんだ。で、最後は先生のことをリアルによく知るコアなマニアにしか通用しない内輪ネタだよ。でも、ある意味これが最も正しい使い方なんだろうな。

amazon type

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2004/11/08

フェンタシールだらけの本

■翡翠科研修チェックノート―書き込み式で研修到達目標が確実に身につく!

翡翠科研修チェックノート―書き込み式で研修到達目標が確実に身につく!

聞くところによると、研修医用のテキストは↑がいいみたいだぜ。いや、でもね、みんな、ここで先生が讃岐先生の本を推薦していたことは内緒だよ。実はね、先生は本当は別の本を推奨しなければいけない立場なんだ。だから絶対内緒だよ。

■フェンタシールだらけの翡翠科研修チェックノート その2 その3 その4

そしてこの本はフェンタネストのシールを貼りまくるのが正しい使い方らしいぜ。著者が言ってるんだから↓間違いないっ!

■フェンタネストのシール
■フェンタネストのシール(その後)

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2004/04/19

英語医学論文を書こう!

■アクセプトされる英語医学論文を書こう!
―ワークショップ方式による英語の弱点克服法―
 ネル・L・ケネディ著 菱田治子訳 メジカルビュー社 本体3000円

 君の本棚には英語医学論文の書き方とか、医学英語類語集の類がたくさん並んでいないかい? 先生のお薦めは、S浦君も推薦するこの本です。日本人の英語原稿をたくさん添削してきたケネディ先生だから、それはもう痒いところに手が届く良書です。多くの誤用例とともに、論文の具体的な書き方を指示してくれる内容なので、辞書的に使うだけではなく、頭から読み進めても飽きません。先生は、今月中に英語論文を2つ書き上げるぞ!っと決心してから三ヶ月経ってしまいました。この本を熟読してから初心に帰って頑張るつもりです。一年ぐらいかけてじっくり読もうと思います。

抜粋:以下の文の誤りを指摘せよ。
1) The purpose of this study is to ...
2) The objective of this paper was to ...
答え:1) is→was、2) was→is

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2004/03/19

Googleで英作文

■翻訳に役立つGoogle活用テクニック

 英語でこんな言い回しあるのかな?と迷ったときに、適当な単語をGoogleに入れて出てきた英文を参考にすることは以前から我流でやってきましたが、この本ではそのテクニックを詳細に公開しています。今日は、"These results suggest a role of ..."なんて決まり文句を書いていたら、何か物足りないので、"role"の前に来る何か良い形容詞はないかな?と思ったのです。さて……

 教えに従って、まず"results suggest * role"で検索。"a role", "the role", "no role", "some role"などがよく出てきます。

 まだ寂しいので、ワイルドカードのアスタリスク(*)を2つにして、"results suggest ** role"で検索しました。すると、出てくる出てくる。「重要な役割」とか「明らかな役割」があるというような意味の表現にしても、"a critical role", "a major role ", "an important role", "a strong role", "a key role"などがあって、細かいニュアンスで悩んでしまいます。他にも"a minor role", "a positive role", "a specific role", "a potential role", "a novel role"などが良く使われるようです。まあこの程度なら、Googleで苦労してやらなくても、WebLsdの共起表現で検索すれば一発なんですが。

 ごく一部の人にとってタイムリーな記事でしょ?

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