2013/01/12

ヨウコ先生のビンタをくらったハトリ君の記憶

小学生のとき、なんかの委員会に出席した。

僕と一学年下のシイナさんという女の子が向かい合わせに座ってみんなが集まるのを待っていた。窓際に座っているのは細い目をしたヨウコ先生である。ヨウコ先生は髪が短くてスポーツが得意で、いつも緑色のジャージを着ている。きびきびした男みたいな喋り方をする先生だった。

集合時間を少し過ぎたころ、遅刻魔のハトリ君が「やべーやべー忘れてた」とへらへらしながら部屋に入ってきた。 そしていったん椅子に座ったのだけれど、となりがシイナさんだと気づくと、「オェー」といいながら立ち上がり、あわてて僕のとなりの席に移った。

そのとき、ヨウコ先生の顔がみるみるうちに真っ赤になった。

「ハトリ君、今どうして席を移ったの?」

いつもは冷静なはずのヨウコ先生が、そのときはハトリ君をにらみつけて震えていた。ハトリ君は「いや、別に」とうつむきながら何かをモゴモゴといった。 これほど怒っているヨウコ先生を見たのは僕は初めてだった。

「シイナさんの指が足りないから席を移ったの?」

ヨウコ先生の声はもう泣き声が混じって裏がえっていた。
指? シイナさんの指だって?
僕はそれまでシイナさんの指のことなんか何にも知らなかった。
普段から少しようすがおかしい子だとは思ってたけれど、彼女の指をじっくり見たことなんてなかった。

シイナさんは机に肘をついて、手の甲側に反らせた長い指に顎をちょこんとのせ、どこか遠くを見つめてぼうっとしていた。ヨウコ先生の声も全く耳に入っていないようすだった。僕はそのとき初めて、シイナさんの指が三本しかないことに気づいた。その指はとても長くて美しい、しなやかなカーブを描いてはいたけれど、数は足りていなかった。

バシーンと音がした。

ヨウコ先生が急に立ち上がってハトリ君にビンタしたのだ。ヨウコ先生の腕はまるでサイドスローのピッチャーのように水平に空を切り、その手のひらがハトリ君の左頬に見事に命中した。

ハトリ君は床に転げ落ちて真っ赤に腫れた左の頬をさすっていたけれど、笑いながら「うひょー、いってー」とか言いながら、相変わらずへらへらとしていた。

でもシイナさんはまだ肘をついていて、とてもつまらなさそうな顔で、ぼうっとハトリ君を見ていただけだった。

ヨウコ先生は必死に涙をこらえていたけれど、それでも涙はどんどん増えてビー玉ぐらいの大きさにまで膨れ上がった。涙でできたその球体はまるで凸レンズのような効果を生み出し、目が細くていつもは見えないヨウコ先生の瞳を拡大した。そのとき僕は初めてヨウコ先生のキラキラと輝く瞳を確認した。美人だ、と僕は思った。でもそれは一瞬のことで、そのあとすぐに涙が二個のビー玉となって床に落ちると、ヨウコ先生はいつもの男っぽい顔に戻っていた。僕は転がってきたそのビー玉を拾ってポケットに入れた。

委員会が終わって僕が部屋を出ると、そのあとからハトリ君もすぐ出てきた。
「いやー、いたかったー。今までで一番痛かったかもしんないな」
ハトリ君はニヤニヤしながらそう言った。むしろ喜んでいるようにさえ見えた。
「あ、ねえ、これ見て見て。ビンタされたビンタされた」
ハトリ君は誰かを見つけては自分の真っ赤に腫れたほっぺたを自慢気に見せながら歩いてた。

それから何日か過ぎ、母の運転する車に乗せられて町に行ったときのことである。交差点を曲がったところで警官が笛を吹きながら飛び出してきて母の車を止めた。

母が手動で運転席の窓を開けると警官が覗きこんできて、「いま赤信号だったでしょ。信号無視ですね」と冷たく言い放った。身に覚えの無かった母は、「そんなことはありません。私はちゃんと青なのを確認してから曲がりました」と反論した。毅然とした母の態度にちょっと怯んだ警官は、「じゃあ、黄色だったでしょ」と言った。今となってはどうしてだか思い出せないのだが、そのとき母はずいぶん虫の居所が悪かったようで、「赤じゃなかったなら黄色だとは何ごとか。そんなあやふやなことを言うのは、そっちがちゃんと見ていなかった証拠じゃないか」というふうなことを言って声を荒げた。

それからしばらく繁華街のど真ん中で母と警官の大声による応酬が続いたものだから、気がつけば周りには人垣ができていた。僕は大人のいざこざには全く関心が持てなかったので、どんどん集まってくる野次馬を車の窓から面白がって観察していた。そのとき、男の子の手を引いたまま微動だにせずに無表情でこちらを見つめる太った女の人が目に留まった。そのあまりの無表情ぶりが僕の視線を吸い込んだのである。あれほど完璧な無表情を僕はそれまで見たことがなかった。

「あっ、スミ君!」と、男の子が叫ぶのが聞こえた。女の人の顔から視線をゆっくりと移動させると、その手に引かれていたのは、にこにこしながら僕を指さしているハトリ君だった。ハトリ君はいつもと変わらぬくったくのない笑顔でこちらに近づいてきた。

「あっ、ハトリ君!」と叫び返しながら、僕は急いでハンドルを回して車の窓を開けた。
「スミ君も町に買い物にきたの?」とハトリ君は嬉しそうに言った。
「うん」なにげなくポケットに手を入れるとビー玉が二つ入っていた。「これ、ハトリ君にあげるよ」といって僕はそのビー玉を手渡した。
「うわ、すっげーきれいなビー玉だな。町のどこで売ってたの?」とハトリ君は訊いた。
「いや、拾ったんだけどさ」
「ふーん」
そのときにはもう僕もハトリ君も、ヨウコ先生やシイナさんのことは頭の片隅にさえ残っていなかった。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

2013/01/09

体罰の達人アベ先生の記憶

僕の学年はアベ学級とカヲル学級の二クラスだった。

今から考えると僕はカヲル先生の相当なめんこ*だったようで、何度クラス替えがあってもいつもカヲル先生のクラスだったから、アベ先生のクラスになったことは一度もなかった。アベ先生はとても厳しいという噂だったので、クラス替えのたびに僕はいつも内心ほっとしていた。でも父兄のあいだではアベ先生のほうが圧倒的に人気があった。ユウちゃんのお母さんも、ユウちゃんはアベ先生が担任になってから見違えるように勉強するようになったって喜んでいた。

アベ先生は普段は物静かで口数も少なく、クラスの違う僕はほとんどその声を聞いたことがなかった。そしていつも、どこか悲しげな眼で遠くを見つめている、というような印象があった。

一度、アベ先生のクラスの友だちに学級通信を見せてもらったことがある。当時の先生たちはみんな学級通信を鉄筆で手書きしてガリ版で印刷していたのだ。見慣れたカヲル先生のポップな感覚の学級通信に比べて、アベ先生のそれはまるで習字の手本のようにおかたい印象だった。

「最近、髪の長い子どもが目立ちます。子どもはスターではありません」

アベ先生はヘアスタイルや服装にもとても厳しかった。とにかく規律を重んじる先生で、その点においては父兄に宛てた文面の中であっても容赦はなかった。

アベ先生はよく体罰も使った。

ある日、洗面所でとなりで手を洗っていたカメダくんの左頬に真っ赤なアベ先生の手のあとが紅葉のように残っていた。

「カメ、なにやらかしたんだよ」
「なんでもねーよ」

まるでお相撲さんの色紙みたいにみごとな手形だった。みんなそのカメのほっぺたの手形を見てクスクス笑っていたが、カメはわざと平静を装っていた。あれだけ見事な手形は隠しようがないので、カメは開き直るしかなかった。むしろ、自慢げにわざと見せびらかしているようでさえあった。

アベ先生が実際にビンタをはる場面を目撃したことも何度かあった。ものすごい音のする迫力のあるビンタで、傍目で見ていても充分恐ろしかった。だけどビンタをするときでもアベ先生の眼は、怒りに燃えた眼ではなくて、あのいつもの悲しげに遠くを見つめる眼のままだった。僕はそれがよけいに恐ろしかったことをよく覚えている。

全校集会で体育館へ集まるためにみんなで廊下に並んでいたときのことだ。僕たちは退屈だったので、ついこないだ結成したばかりのリトルリーグチーム、ジャガースの、円陣のときの掛け声をみんなで考えていた。

「やっぱり、こないだの一番オーソドックスなやつに決めようぜ」
「ちょっとやってみるか」

僕らは廊下で円陣をくんだ。

「ジャガース! ファイト!」
「オー!」
「ファイト!」
「オー!」
「ファイト!」
「オー!」

大声を出すことの開放感と、みんなとの一体感。
そして叫び終わったあとのものすごい達成感に恍惚としていた。

ところがそのとき、遠くの方からからアベ先生が、その辺の子どもたちを乱暴にかき分けるようにして、ものすごい大股で歩きながら僕らに近づいてくるのが見えた。

しまった! やられる!

でももう遅かった。

「そういうことは、外でやれっ!」

アベ先生の怒号が聞こえるや否や、僕の目の前は一瞬真っ暗になり、そのあと閃光が走った。

「痛てて」と頭を抱えてうずくまると、僕のすぐとなりにいたケンちゃんも、僕とまったく同じかっこうをしてうずくまっていた。

恐る恐る顔を上げてまわりを見わたすと、そこら辺の男子を二人一組に捕まえては、それぞれの頭を片手ずつ掴んで、頭同士をガツンとぶつける、それを次々と続けるアベ先生の姿が見えた。まるで児童の集団に乱入した殺人鬼のようだった。その周囲には僕らと同じようにガツンとやられた男子が大勢うずくまっていた。誰もアベ先生から逃げられなかった。

「いやあ、痛かったなあ」あまりの痛さに僕の目には涙がにじんでいた。
「おまえなんかいいさ、一回だけだろ」と、以前からアベ先生に目をつけられているベンちゃんがいった。
「え? おまえ二回もやられたの?」
「おう、最後にひとり余ってな。俺らの人数が奇数だったんだな、ちくしょう。おまえちょっと来いっていわれて、その最後のやつともう一回ゴツンさ」

僕は涙を浮かべながら少し笑った。手で頭を触ると立派なコブができていて、押すとやっぱり痛かった。それが僕がアベ先生からもらった最初で最後の体罰だった。

それからしばらくして、クラス会といって各クラスでおやつとかを食べながらみんなで出し物をやったりする会があったのだけれど、となりのクラスでカメがすごい出し物をやったといううわさでもちきりになった。それで僕はカメに会ったときに、
「ねえねえ、何をやったの?」と聞いたら、
「ただの替え歌だよ」と答えた。
「なんの替え歌?」
「妖怪人間のベム、ベラ、ベロのところを、オーヤマ、マツダ、タナカに替えたんだ」それは知的障害で特殊学級にいる子たちの名前だった。「早く人間になりたい〜、ってさ」

僕は少しびっくりした。

「そんなことやってアベ先生に怒られなかったの?」
「いや、にこにこしながら聞いてたよ」

当時の僕は、周囲の子どもに比べればかなり大人びたほうだと自負していた。けれども、この話を聞いたときには、大人が子どもを叱るときの、その判断基準というものが完全に分からなくなって混乱してしまった。無邪気に騒ぐことが頭を割られるほどの悪いことなのに、残酷で差別的な行為(これも子どもらしいといえばそうなのだが)はお咎めを受けない。これが大人の常識とするならば、僕は大人を理解できない。そうだとすれば、僕はとりあえず、たとえそれが理不尽に思えようとも、おとなしく従っていくしかないな、大人になるまでは、と考えた。今思い出すと、そんな考え方をすること自体がやっぱり子どもらしくない、卑怯な子どもだったな、僕は。

*めんこ:贔屓にされている子の意。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

2012/12/15

れにちゃんの予知能力について

前回予知能力のことを書こうと思ったのは、ラジオで平成ノブシコブシがももクロちゃんについて話していたことが頭にあったからです。僕の頭の中で修飾された記憶によれば、それは以下のようなものでした。

まず、ももクロちゃんのことが大好きな徳井が、ももクロちゃんがいかに愛すべき存在であるかを説明するために、ももクロちゃんと共演した某芸人の体験談を紹介しました。その芸人は出番がきて呼ばれたので収録に向かったのですが、うっかり台本を忘れたまま出ていってしまいました。それに気づいて台本を取りに戻ってきたところ、突然テーブルの下に隠れていた高城れにちゃんが「わぁー!」と言って飛び出し、とてもびっくりしたそうです。れにちゃんは、きっと台本を取りに戻ってくると思ったので驚かそうと思って隠れていた、とのことでした。それで某芸人はとても感激して、れにちゃんにすっかり感電してしまったようです。ももクロファンとしてはいかにもれにちゃんらしいエピソードだなあと思うことでしょう。

「だって台本なんて現場にもあるんだから、戻ってくるかどうかなんて分からないじゃないですか。それなのにテーブルの下にずっと隠れて待ってるんですよ」と徳井はさらに熱弁を振るいます。

しかし、アイドルに全く興味のない吉村はそっけない態度です。「よく分からないんだけど、それのどこがすごいことなの? 戻ってくることを予知した予知能力がすごいってことなの?」

僕はこれを聞いて怒りにさえ近い感情が湧いてきました(マジレスが恐いので念のために書いておきますが、これが吉村の大ボケであるという可能性は今回は無視します)。僕は吉村を初めて見たとき、久しぶりに出てきただけでおもしろい芸人が現れたと期待したものですが、この一件で少し嫌いになりました。たしかに、れにちゃんは幽体離脱をして世界中どこにでも行けるし、世界は高城れにを中心に回っていると憲法にも書かれているそうなので、れにちゃんが常人離れした予知能力を有している可能性は極めて高いです。しかし、このタイミングでの吉村のこの発言は、雄大なももクロ愛について熱く語っている徳井のその話に水を差す由々しきものとして非難されるべきものではないでしょうか。

まあだけど僕だって、実は人のことは言えないのです。人の話の腰を折ったり、話に水をさしたりするのは親父譲りでしょっちゅうのことです。たとえば僕は今北海道にいるので周りはみんなファイターズに熱狂するんですが、ファイターズが攻撃のときに打者が内野手と外野手の間に落ちるポテンヒットを打ったときなんか、解説のガンちゃんが「これは当たりはどんづまりなんです。だけどどんづまりでも勝ちたいという気持ちが球に伝わってヒットになるんです!」とか叫ぶわけです。そうすると周りもみんなそうだそうだーって盛り上がるんですね。でも僕はそこでひとりシラーッとして、それっていわゆる念力っていうことだろうか、なんて考えてしまうわけです。しかも、それは念力の中でもテレキネシスサイコキネシスのどちらに該当するんだろうか、いや、そもそもテレキネシスサイコキネシスって違うのだろうか、そしてもしも違うとするのならば、その違いを的確に説明するための事例を上げることは可能だろうか、などということを考えこんでしまい、試合経過なんかどうでもよくなってしまうのです。

そんな僕ですから、前回タイムワープについても書きましたけど、あれは果たしてタイムワープでよかったのだろうか、それともタイムスリップ? タイムリープ? タイムトリップ? などといまだに気になっていて落ち着かない状況です。

というわけで、やっと本題です。超能力に関しては、ほかにもテレパシーとか、テレポーテーションなんかがありますが、英語で言うことが多いですよね。だけどどうして予知能力をあらわす英語のプレコグニションは、他に比べていまひとつメジャーになれなかったのだろう。実は今日書きたかったことはこれだけなんですが、あえて散漫な文章を狙ってみました。こんな散漫な文章でもいいのなら、また近いうちにお会いしましょう。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

2012/12/13

タイムワープまたは予知能力について

全く文章が書けない状態に陥ってしまった先生ですが、いくらか快方に向かいつつあるので、今日はリハビリもかねて先生の専門分野である超能力について少し書いてみましょう。

先生は子どもの頃から多種多様な超能力を発揮していました。中でも得意としたのは予知能力です。先生は12歳のとき、その後の自分の人生をすべて完璧に予知しました。51歳になる今日までの先生の人生は、その予知したものと全く寸分も違わぬほど同じでした。てゆーか、別の言い方をすれば、先生はついさっきまで、洗面台で顔を洗っていた12歳の美少年だったのです。ところが洗顔し終わってふと顔を上げてみると、鏡の中には今日で51歳を迎えるやつれた中年男がいるので、それはもう腰が抜けるほどびっくりしました。え? なになに? どうして? これからあんなことやこんなことやそんなことを経験して、めくるめく青春時代を駆け抜け、どろどろした大人社会を這い上がり、そのあと世界をまたにかけて大活躍するはずだった先生です。そんな前途有望な12歳の美少年が、あっという間に、人知れずうらぶれたところで余生という名の第二の人生を送っている中年のおっちゃんに変身したのです。あーああ、なんじゃこれ、すっかりあっちもたたなくなっちゃってるじゃん、もうショックから立ち直れません。だって人生の楽しいところの大部分をすっ飛ばして、やにわに突然いきなり急に老後の生活に突入ですよ。がっかりなんてもんじゃありません。

しかし見た目は51歳のおっちゃんでも、中身はついさっきまで眉目秀麗な12歳の少年だった先生は、ここで冷静になって考えてみました。すると、これこそ先生の類稀な才能、タイムワープ能力だったってことに気づいたんです。タイムワープといってもただのタイムワープじゃありませんよ。まず、このタイムワープはちゃんとからだの老化を伴います。そのうえ、実際には経験したことがないはずの、12歳から51歳までの人生の記憶が、まるで実際に経験したことかのように先生の脳内に刻まれているのです。もうお分かりでしょうか。そうです、これこそが先生の未来予知の方法なんです。つまり、12歳の先生は、身をもって51歳の未来へとタイムワープし、そして未来の記憶をまんまと手に入れて、それを12歳の現在に持ち帰ったというわけです。だから今日、51歳までの先生の人生は、全く先生の予知したとおりだったんです。

いや、まてよ、そうかな? 違うかもしれません。実はなにかの間違いで、先生はまだ一度も12歳のときの現在に帰っていないような気もしてきました。神様、念のために、どうか僕を12歳の僕に戻してくれませんか。などとすっかり慌てふためいているうちに、気がついたら先生はやっぱり51歳のただのおっちゃんに成長し、そして今、これを書いているのです。というように、今日は先生のものすごい超能力についてぜひ書き記しておきたいと思い、書き始めてみたのですが、前置きみたいな話が無駄に長くなってしまったので、このへんでいったん区切り、スタジオにお返ししたいと思います。ハッピーバースデー俺。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

2012/10/14

当直明け

お久しぶりです。当直明けでした。唐突に約5年半ぶりの奥さん自慢をしますが(占いグラタン―2007.5.16参照)、先生の世界的な奥さんはたいそうよくしたもんで、先生が当直のときは必ず忘れずに、翌日分の下着と靴下と、それから脱いだ下着と靴下を入れるための袋(これはたいがい使い古したレジ袋)を持たせてくれます。今日はかわいらしい犬の絵が描かれた黄色い袋が入っていました。こんな感じです。

犬のうんち袋
(注:先生の脱ぎたての下着と靴下が透けて見えますが臭いが漂ってくるようなことはありませんのでご安心ください)

ん?っと、ここで思い出したんですが、この袋って、無料で配布されている犬のウンチ用袋じゃなかったかな? 先生の使用済み下着は犬のウンチなみってことでしょうか。
( ̄▽ ̄;)!!ガーン

本日はこれまで。でわでわまた忘れた頃にお会いしましょう。
(。◕ ∀ ◕。)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

2012/02/24

過剰包装その2

過剰包装1

アマゾンから頼んでいた本が届きました。あれ、薄くて小さな本一冊だけだと思ったんだけどな、他にもなんか頼んであったけな?

過剰包装2

やっぱりあの一冊だけだ。ぷぷぷ、笑える……。

過剰包装3

先生が買ったのは、新訂版 感染症診療の手引き―正しい感染症診療と抗菌薬適正使用を目指してです。とても小さな冊子です。アマゾンには17.2x9.7x3.7cmって書いてありますが、実際には160x90x3mmしかありません。ちなみに重さは約60g。対してアマゾンのダンボール箱は皆さんおなじみのXM04で、大きさは330x250x115mmです。

過剰包装4

厚さがたった3mmの小冊子です。これ一冊のために330x250x115mmのダンボール箱……。

過剰包装5

ちなみに、なぜアマゾンが一見これほど無駄に見える包装をするのか、その理由は先生すでに知っていますので、わざわざ教えてくれなくていいです。

そんなことよりも、このエントリーの題名、「過剰包装その2」ですが、どうして「その2」なのか、という疑問を抱いていただきたいと、先生は思うのです。

答えは、もちろん「その1」があるからです。これ↓

■過剰包装(その1)|スミルノフ教授公式ブログ(2004/01/05 月)

うわっ、古! 何年ぶりの続編よ!

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

2011/12/20

4年ぶりの快挙!

みなさん、こんにちは。

つまんないとか、分からないとか、興味ないとか、そもそも見てないとか、まだやってたのとか、いろいろ言われながらも(あるいはガン無視されながらも)、なんと今月のエントリー数が二桁の大台にのりました!

ひと月のエントリー数が二桁に達したのは、2008年の3月、1月がそうですけど、これはずいぶん後からエントリーを追加したのでそうなっているのであり、純粋に二桁といえるのは2007年の12月以来のことです。

つまり、なんと4年ぶりの快挙!

これぞ、線香花火が消える前の一瞬の輝き、といえるのではないでしょうか。いや、いえないのかな?それはほんとうに消える瞬間が来ないと分からないですよね。

ではまた。(なんか昔っぽい)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

2011/12/05

コトラ17:シュルレアリスムにおけるデペイズマンという手法にみる人間の超現実世界に対する認識力への自己過信と絶対的な客観の存在性について

私が連載しているこのコトラ・シリーズの第1回を覚えておいでだろうか?

コトラ1:私の名前|スミルノフ教授公式ブログ
私が紹介することになったのは、旭川のかりんとう専門店「北かり」のかりんとうである。教授がスイーツブログはもうやめたと云って旅に出てしまい、原稿を書いてくれないので、私にお鉢が回ってきた。しかし、見知らぬ私がいきなり「かりんとう」について語ったところで、私についてなんのバックグラウンドも持たない読者が興味を示すとは思えない。そこでまず、私は何回かに分けて自分語りをしようと思う。いったいいつ「北かり」のかりんとうに辿りつけるのかは未定である。

そしてようやく辿りついたのである。この日をどんなに夢見たことか。
まさかここに辿りつくまでに連載にして17回、月日にして5ヶ月以上も要するとは、連載開始当初は思ってもみなかった。だがついに私にも、憧れのスイーツブロガーになる日がやってきたのである。

北かり1

それではさっそく私がご紹介しましょう。ここが旭川が生んだかりんとうの名店、北かりであります。 さっそくお店に入ってみましょう。

北かり2

お店に入ってまず目につくのが、この大きなざるに入った大量のかりんとうです!

突撃レポートっぽく始めてみたが、実は私はお店になんか行ってない。なぜなら私は人間ではないので、行ってもあまり意味がないからだ。写真だけ渡されて、実際に行ったようなふりをして原稿を書けと言われている。なんて腹立たしいことじゃないか。

北かり3

おい、よく見てみろ。しかも、これはかりんとうなんかじゃない。かりんとうの模型じゃねえか。いや、実は私には模型である、っていうことすら認識できないのだ。はっはっは。

ちょっと危険だが、ここで最も極端なケースを考えてみよう。今、人類が一人残らず滅亡したとする。それでもこれはかりんとうだろうか? いや、かりんとうの模型だろうか?
人類がいなければ、それはもやは何者でもなく、ただの物質に過ぎないのだ(もちろん、かりんとうという意味も消滅するから、かりんとうもただの物質、ということになる。だから危険だといったのだ)

まあとにかく、もう一度考えてみよう。
これはかりんとうだろうか?
かりんとうの模型をかりんとうだといっても、通常はなんの問題もない。

だがしかし、現実問題としてどうであろう。
これはかりんとうだろうか?
もちろん答えはNOである。

それでは、超現実問題としてどうであろう?
これはかりんとうだろうか?
もちろん答えは超NOである。

さて、話の展開がいくぶん強引かもしれないが、ここで本日のテーマに入る。本日のテーマとは、「シュルレアリスム」である。日本語では言うまでもなく(と言って言うのだが)「超現実主義」のことである。

超現実とは何か?
超現実とは「すごーく現実」という意味である。
「すごーぐ現実」ということは、もう個人の主観の入り込む隙間などないくらい、がっちがちに現実だ、ということだ。

したがって、何か訳の分からない物とか、幻想的なもの(この場合は個人の極めて主観的な認識に基づく想像、という意味である)に対して、

シュールだなあ

などと表現することに、私は絶対反対である。
それは全くもって正反対の意味の使われ方だからである。
そもそもシュルレアリスムでひとつの言葉であるので、それを分割すること自体が許されないのである。

つまり、超現実世界とは主観の徹底的否定であり、逆に極めて客観的な世界なのだ。
世界中の誰が見ても、犬が見ても、猫が見ても、何も変わらずそこに存在するその物自体で構成される客観的な世界、それが超現実世界なのである。

私に言わせれば、そのことを最も気づかせてくれるのが、シュルレアリスムにおける様々な手法の中でも、デペイズマンという手法である。デペイズマンとは何であろう? よくみられるデペイズマンの解説はこうである。

テペイズマンとは
テペイズマンとはシュルレアリスムにおける手法のひとつで、
意外な組み合わせをもって固定概念を覆し、驚きを生む方法である。
具体的には、例えば、
本来あるべき場所を別の場所に移す(位置のデペイズマン)、極端にサイズを変える(大きさのデペイズマン)、物の素材を別のものに入れ替える(素材のデペイズマン)、明るい空の下に夕闇の光景を描く(時間のデペイズマン)など……。

もし具体的なイメージが欲しければ、デペイズマンを多用した代表的な画家がルネ・マグリットなので、ルネ・マグリットで画像検索していただくと、おおよそどのようなものかがお分かりになると思う。

さて、上の解説では「固定概念を覆し、驚きを生む」と書いた。おそらく実際には、シュルレアリストたちの本音は「驚かせたい」、というところにあっただろう。しかし、美術史的に重要なのは、絶対に「固定概念を覆す」の方である。

固定概念とは、主観に内包されるものであり、しばしば主観のウィークポイントに成り得る。往々にして固定概念が覆されるときには、自分がいかに主観にばかり依存していたかということを思い知らされ、その代わりに客観とは何かという問いの答えに近づいたような気にさせられるものである。

では、さっそくここで私もデペイズマンを実践してみよう。
位置のデペイズマンである。
これである。

デペイズマン

これが皿の上に置いてあればそうは思わないのに、これを床の上に置いただけで、一瞬でも「犬のうんこ?」などと思ってしまうのが、人間における主観というもののダメなところなのである。もちろん、実際にこれを犬のうんこだと思った人は多くはあるまい。だが、犬のうんこを連想した人は少なくないはずだ。

なにバカなこといってるんだ、くだらねえ、犬のうんこなわけねえだろ、かりんとうだろ、ばーか、とかゆってる君に正解を提示する。

チョコクランチ

かりんとうではない。チョコクランチである。
床の上に置くなら、位置のデペイズマンにより適しているのはかりんとうではなくチョコクランチなのだ。これは豆知識として君に授けよう。

そうではなくて、次にお見せするのが、北かりの代表作、後をひく旨さが自慢の、歯ざわりさくさく、後味が意外とさっぱりしてるので、ついつい食べ過ぎちゃいますの、黒糖ってすごい!の、北海道産へのこだわりの、春ゆたかである。

かりんとう

これこそが、かりんとうの中のかりんとう、北かりの春ゆたかなのだ。

ところがこうして床に置くことで、それが一瞬でもかりんとう以外の何かに見えたとき、あなたは人間の主観というものがとても頼りなくて脆いものだということを思い知るだろう。それこそがデペイズマンの効果であり、また「客観」の世界を描写するシュルレアリスムの真髄なのである。

かりんとう2

私には分かる!
私は主観という病に侵された人間ではないのだから。
たとえかりんとうが床に置かれていようとも、
私の視界の範囲外に置かれていようとも、
それがかりんとうであるという「超現実」が、
揺るぎのないものであるということが!

だからいいかげん食わせろ!

註)本エントリーはいつものようにネタであり、シュルレアリスムとは何か (ちくま学芸文庫、巖谷國士著)とは基本的には無関係であるとお考えいただきたい。たしかに本エントリーは同書に多大な影響を受けており、受け売りである部分が多々ある。その一方、かなり意図的に読み違ってわざと曲解し、我田引水的なネタエントリーになっているのも確かなので、無用な誤解を避けたいからである。

しかし、このエントリーとは関係なく、同書はスミルノフ教授が今まで読んだノンフィクション本としてはベスト3に入る良書(スミルノフ教授談)だそうなので、ぜひ一読をおすすめする。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

2011/12/01

翡翠科専門医試験

入室すると試験官が二人坐っていた。試験官Aは初老の男性だった。白髪混じりの残り少ない髪。口の周りにも白髪まじりの髭がはえていた。立派なべっ甲のフレームの老眼鏡をかけていて、もともと大きな目がよりいっそう大きく見えた。試験官Bは初老の女性で、明るい色合いのスーツを着ていた。

試験官A: 所属とお名前をどうぞ。

カワセミ: N大学翡翠科(ひすいか)のカワセミです。

試験官Aは僕をリラックスさせようとしているのか、にこやかな顔で話しかけてきたが、その大きな瞳はけっして笑ってはいなかった。

カワセミさん: 症例問題の巻

試験官A: それでは、まずこの症例問題を見てください。

症例1 50歳男性。身長150cm、体重75kg。慢性関節リウマチに罹患している。環軸椎亜脱臼に対して後方固定術が予定された。ステロイドを長期内服している。親戚がアントニオ猪木。

試験官A: じゃあ早速ですが、この人の問題点を述べてください。

カワセミ: えーと、ステロイドの長期内服、腹臥位の手術に伴う危険、あ、あとは肥満に伴う様々な合併症が考えられます。

試験官A: それから?

カワセミ: リウマチに伴う合併症ですかね。腎機能障害とか?

試験官A: うーん、もっと大事なことを忘れてませんか?

カワセミ: え、えーとーえーと、なんだっけ

試験官A: ほらほら、さしすせ……

カワセミ: ステロイドカバー!

試験官A: いや、それも大事かもしれないけどね、ほら、さしすせ……

カワセミ: 醤油!

試験官A: しょうゆーこと! いや、そうことじゃなくてね、そ、そ、そ……

カワセミ: ソース?

試験官A: どんだけ腹へってるんかいな、君は

カワセミ: あ、ひょっとして挿管?

試験官A: そうそう! 挿管? 挿管なに?

カワセミ: 挿管困難!

試験官A: そそ、それをいってほしかったのよ。さて、どうしてこの患者さんに挿管困難の危険性があるのかな? 先生はそこが一番聞きたいなあ

カワセミ: えーと、それは、慢性関節リウマチに伴う環軸椎亜脱臼があるので、あまり頸部を動かすことができないからです

試験官A: それもあるかもしれないけど、ちょっと期待はずれだなあ

カワセミ: 期待はずれ?

試験官A: 君、もっと大事なことを見落としてるよ

カワセミ: え、なんだろ……。えーとえとえと(このあたりから頭が真っ白になって何も考えられなくなってきた)

試験官A: 家族歴だよ、家族歴

カワセミ: え、家族歴って?

試験官A: 親戚がアントニオ猪木!

カワセミ: え、そこかよ!?

試験官A: 末端肥大で挿管できないかもしれないじゃないか

試験官B: あと、意識が朦朧としたところで急に「ダーッ」ってゆって殴られるかもしれないわ

試験官A: そそそ。「いち、に、さん」とか言うのも、もう絶対に禁忌だからね、気をつけないとダメだぞー

カワセミ: そ、そんな……

試験官A: 君、なんかいまいちだね。じゃあ気をとりなおしてもう一問いってみよう。

症例2 30歳男性。身長175cm、体重53kg。過度の減量によって脱水状態となり意識を消失した。心電図上は心室細動である。

試験官A: さ、君どーする、どーするね

カワセミ: あのー、脱水ですからまず急速輸液をします

試験官A: ブブー。君あのね、そんなことしたらせっかくの減量が台無しになってジョーと対戦できなくなっちゃうじゃないか

カワセミ: えー、これひょっとして、あしたのジョーですか?

試験官A: ばかもの! ジョーじゃなくて力石だろ。ったく最近の若者はなってないな。

カワセミ: (知らんよ、そんなもん……)

試験官A: しょうがない。誘導してやるか。細動だよ、心室細動

カワセミ: あっ! わかった! カウンターショック!

試験官A: ひっかかりやがった!

カワセミ: え?

試験官B: それはクロスカウンターをくらうから危ないのよ。ほーほっほっほっ

そのとき、ドアの隙間から丹下段平がこっそり見ており、クロスカウンターや……とつぶやいてたという。

カワセミさん: 実技問題の巻

次の部屋に入室すると、またさっきと同じ、白髪混じりでハゲのジジイと年甲斐もなく派手なスーツを着たババアが試験官だった。僕はため息をついた。

試験官A: いやー、わりーね、また僕たちで。翡翠科も人手不足でねー

カワセミ: はあ……

試験官A: ま、こんどは実技だから。気楽にいこう、な

部屋の真ん中には蘇生人形が横たわっていた。

試験官A: じゃ、BLSやってもらうかな。できるよね、これやるって告知してあるんだし

カワセミ: はあ……

私はおもむろに蘇生人形の肩を揺らし始めた。

カワセミ: どうしましたーどうしましたー。大丈夫ですかー

試験官A: はいはい意識の確認ね。まあ正解なんだけど、みーんな同じセリフなんだよなー。君らはいいかもしれんが、先生は何人も何人も同じセリフ聞かなきゃならないんだぞ。もういいかげん飽きちゃった

カワセミ: いや、そういわれましても

試験官A: どうかね、君。ここらで一発、黒板五郎でそれやってみてくれないかね

カワセミ: 黒板五郎って、だ、誰ですか?

試験官A: 君、黒板五郎知らないの? いやだなー、ほんとに近頃の若者はー。黒板五郎っていったら黒板五郎だよー。北の国からー。田中くにえー。知らんのかねー?

カワセミ: 北の国からって、見たことないっす

試験官A: しょうがないなー。じゃあ、特別だけど、今から模範演技見せるから。よく勉強していきなさい。おい、ローリー!

ドアが開いて猫背の男が入ってきた。ローリーと呼ばれたその男は、実際には田中邦衛よりずっと若く、わざと猫背のかっこうをしているらしかった。

ローリー: やるならいましかね〜 やるならいましかね〜

機嫌よく歌いながら登場したローリー扮する黒板五郎。ふと、机の上の蘇生人形に気づく。

ローリー: ど、ど、ど、どうしたんだべ?

恐る恐る近づく五郎。

ローリー: だーいじょぶかぇー?

最初は小さな声でゆっくり声をかける五郎。

ローリー: おい!おい!

やがて、事の重大さに気づいて、大きな声を出しながら激しく蘇生人形を揺さぶる五郎であった。

ローリー: ひぇー! たいへんだ〜!

後方に飛び退き、尻もちをついて慌てる五郎。必死で立ち上がり、誰か助けを(たぶん地井武男を)呼びに行く。

ローリー: 草太がたいへんだー! だれかー!

そしてローリーは退場した。そのとき、どこからともなくスキャットが聞こえてきた。もちろん、夜明けのスキャットではない。

試験官A: アアーアアアアアーア、アアーアアアアアー

さだまさしが作った北の国からのテーマ曲だった。試験官Aが歌っているのだった。試験官Aはうっすらと涙を浮かべて感慨にふけりながら、歌っていた。試験官Bは、そっとハンカチを出して目尻に溜まった涙を拭きとった。

試験官A: ムムームムムムームム、君に幸せあれ

試験官B: あら先生、途中から長渕剛の乾杯になっちゃってますよ

試験官A: ああ、こりゃあ失礼した。ま、いいじゃないか。だって北の国から'89帰郷では乾杯も需要なテーマソングになるからなあ、あながち間違いともいえない。

私も試験官Bもあきれたという顔つきで試験官Aを見た。

試験官A: じゃあ次の課題にとりかかろう

カワセミ: え、次の課題ってなんですか? なんにも聞いてないんですけど

試験官A: 蘇生ダジャレゲーム!

カワセミ: 蘇生ダジャレゲーム?

試験官B: 最後の問題なので得点が倍になりまーす!

カワセミ: ば、倍になりますって、テレビのクイズ番組じゃないんだから……

試験官A: 君、このままじゃ、合格は危ないぞ。やるのかね、やらんのかね

カワセミ: あ、や、やりますやります

試験官A: それでは得点が倍になるラストチャンスゲーム! 先生に続いてダジャレを言いながら蘇生術を行ってください!

試験官Aはいつのまにか立ち上がって、手にはマイクを持っていた。

試験官A: たいへんだ。ただちに静脈路を確保しなくちゃっ。アンジェリーナ・静脈路確保! はい、君!

試験官Aはそう言って僕にマイクを向けた。僕? 僕の番なのか?

カワセミ: えーとえーと、はい、トミー・リー・静脈路確保しました!

試験官A: アントニオ・カルロス・静脈路確保完了! 心電図はどうなってるかね、はい、君!

カワセミ: し、心電図? えーとえーと、はい、心室細動隆盛です!

試験官A: おお! 君、やればできるじゃないか。非ジョーニー・B・グッドだよ、君。笑わせるじゃないか、心室細動輝彦だって?

カワセミ: (やった! はじめてほめられた)はい!心室細動秀樹です!

試験官A: うーむ、原因はなんだろう。どっか出血でもしているのだろうか

カワセミ: あ、先生、たいへんです。肛門からネアンデルタール便が!

試験官A: よく見つけたぞ! そうすると消化管出血がベースにありそうじゃな。よーし、輸血をするからすぐにクリストファー・クロスマッチじゃ!

カワセミ: 先生、それよりも早くタイガー・ジェット・心マッサージをしなくてはなりません!

試験官A: それは私がやろう。君はタイガーマスク換気で人工呼吸をしてくれ!

カワセミ: 先生、そろそろワシントンDCかけましょう!

試験官A: じゃあ、除細動器を用意しろ! 360ジュールにアブドラ・ザ・ブッチャージ!

カワセミ: 先生、ダメです。心停止〜高峰!

試験官A: レオナルド・ダ・ヒ° ーンチ!

こうして僕の翡翠科専門医試験は終わった。最後の問題の得点が倍だったおかげで、どうやら合格することができたようだ。今の気持ちですか? ほんと、みんなざまあみろって感じです。人生振り返ってみて、よくよく考えてみたら、人間ってやっぱり、ざまあみろって思うときが、一番幸せなんじゃないでしょうか?

それでは、みなさんのご健闘を祈ります(心にもないけどな)。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

2011/11/30

コトラ16: The Long Blog Entry

プロローグ

あらかじめことわっておくが、このエントリーはほんとうに長い(約二万字)ので、私の書くものに興味があるという奇特な方々の中で、よほど暇を持て余している人以外は読む必要はない。結果的に、おそらく完読するのは私を含めて全国で4名ほどになると予想している。

当ブログは主にスミルノフ教授の筆によるエントリーを掲載しているが、教授は2011年の7月から突然休養して、通称「コトラ」と呼ばれるものが代筆連載を開始した。覚えているだろうか。もしご存知でなければ、すぐにウィンドウをとじたほうがよい。

コトラは約3ヶ月で計14回の代筆連載をこなした。
ところが、第15回目に奇妙なエントリーが現れた。表題はコトラの第15回目の連載ということになっていたが、筆者はスミルノフ教授だったのだ。多くの読者は教授が復帰したと思った。しかし教授は、これは復帰ではなく、コトラの代筆、すなわち代筆の代筆であり、自分はもう少し休養を続けるというようなことを書いた。

したがって、次のエントリーはコトラの第16回目のエントリーだと、誰もが思ったことだろう(いや、誰もがそう思うはずだ、と私は思った……)。

ところが、コトラの第16回目のエントリーは現れず(こうしてたった今現れているわけだが)、何ごともなかったかのように、スミルノフ教授自身の連載が復活したのである。読者としては、これはいったいどういうことなのだろう?という疑問が湧いて当然である(ところが信じられないことに読者からの問い合わせは一件もなかった)。

さて、これから紹介するのは、以上のような教授とコトラの不可解な行動の謎(誰も謎と思っていないんじゃないだろうか、という不安は抑えきれないが)を解き明かす物語である。

そして、その謎を解き明かす役を、世界のミステリィ史上最も人気のある私立探偵にお願いした。したがって、この先は、その私立探偵による一人称で語られることになる。

では、今この文章を書いている、この「私」は誰なのであろう?
そのことについては、物語の最後にまた考えてみよう。あなたが最後までたどり着けることができれば、そして私がそのことを覚えていれば、の話だけれど。

続きを読む >>
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

<< | 2/25PAGES | >>

教授御尊顔
教授御尊顔
だまれ!
follow us in feedly
Links
サイト内検索
Googleサイト内検索
懐コンテンツ
喉頭鏡素振りのススメ
スミルノフスイッチ
カテゴリ一覧
過去ログ
Recommend
史上最強カラー図解 はじめての生理学
史上最強カラー図解 はじめての生理学 (JUGEMレビュー »)

ダルビッシュも読んでいる、先生の恩師の著書です。買ってやってくれや。
いちばんやさしい生理学の本
いちばんやさしい生理学の本 (JUGEMレビュー »)
當瀬 規嗣
先生の恩師です。買ってやってくれや。
Others
mobile
  • qrcode
powered
  • 無料ブログ作成サービス JUGEM
PR