理想の研修医K君の思い出
フォルダを整理していたらむかし先生が大学で教えていたころの研修医K君の写真が出てきた。
先生が業界を去ってからかれこれたぶん35年ぐらいは経っているので、そのころの研修医に誰某がいたかなんてことはもうすっかり思い出せなくなってしまっているのだが、ことK君に関しては、それがまるで昨日のことであったかのように覚えている、とまで言ったら言いすぎかもしれないけれど、先生が見た星の数ほどの研修医諸君の中でもK君はひときわ光輝き放っていた理想の研修医といえた。
当時これをアップしようかどうしようか迷っていたので、ローリーに相談したら、こんなの目線も入れずにそのままアップするなんてとんでもない、いくらなんでも個人が特定できちゃうし、あいつにすごく迷惑だから、ぜひやりましょう、と答えてくれた。それでも先生は躊躇して、念のために今度はS浦に相談してみたのだが、あいつはもうすぐ結婚するようなこと言ってましたから今がとても大事な時期なんですよ、それにこれから生まれてくるあいつの子どもが将来これを見たらいったいぜんたいなんて思いますかね、先生そこまで考えているんでしょうね、考えているんだったら、さあ早くアップしましょう、と答えてくれた。
その後その話が風の便りでなんとなくK君本人に伝わり、できればやめてほしいと言ってるという噂が風の便りでなんとなく聞こえてきたのでやめていたのだが、あれからたぶんもう35年ぐらいは経っていて、K君も定年退職してる頃かもしれないし、あるいはすでに他界しているかもしれないし、それになんといっても、もうこのブログを見ている人もほとんどいないようだから、続きをどんどんあげていきます。
チューブ誤挿入
最近チューブ誤挿入に関する共同通信の記事をよく見かけた。
A市の病院で、入院していた男性が胃に栄養剤を入れるチューブを気管に誤って挿入された後に肺炎で死亡し、A県警捜査1課が業務上過失致死容疑で捜査していることが、捜査関係者らへの取材で分かった。
私としては、この文章の、"胃チューブが気管に誤って挿入されること"それ自体がとても危険だという印象を与える点がやや気にくわない。胃チューブの気管への誤挿入が生命を脅かすのは、そこから何かが投与された場合だけであり、胃チューブの誤挿入だけではほとんど危険は発生しない。しかし、肝心の、実際に栄養剤を入れてしまったのかどうか、については記事の最後まではっきりとした記述がないのである。
チューブは自力で食事ができない人に、鼻からのどを通して胃に挿入する。県警はチューブの誤挿入が死亡につながった疑いがあるとみて、担当だった看護師らから事情を聴いている。
しかし県警は"チューブの誤挿入が死亡につながった"と疑っている。すなわち、間接的ではあるが(県警が常識的な医学知識を持ち合わせているとすれば)誤挿入のまま栄養を入れてしまったことを疑っている、というふうに置き換えることができる。
捜査関係者らによると、男性は手術を受けて集中治療室に入っていたが、肺炎で亡くなった。病院側は同日、異状死として県警に届けた。病院側は取材に「警察が捜査中でコメントできない」としている。
このあたりもやや不可解である。手術直後であれば経管栄養を投与するとは考えにくく、したがって事故は手術後かなり経ってから起きたのではないか、あるいは男性はもともと経管栄養をうけていた人だったのではないか、などと想像する。それとも栄養剤は投与されておらず、胃チューブが気管に誤挿入されただけで肺炎を起こして死亡したという稀なケースなのだろうか。いや、病院側が異状死として届けていることから、病院としては重大な医療過誤だという認識があったはずであり、やはり誤挿入された胃チューブを通して栄養剤が投与された可能性が高いと考えられる。
2005年にB県、06年にはC市の病院で、いずれも栄養剤のチューブを、誤って気管支や肺に挿入された患者が死亡しているほか、
気管に誤挿入された胃チューブから栄養剤が投与されるという事故はたしかに散発しているし、いったん起きれば致命的となりうる非常に危険な事故である。くどいようだが、あくまでも栄養剤が投与されるから危ないのであり、胃チューブの誤挿入自体はそれほど危険ではない。
06年にはD市の病院で、逆に気管に入れるべきチューブを食道に誤って挿入し、患者が死亡するなど、各地で同様の事故が起きている。
気管チューブの食道誤挿入は、胃チューブの気管誤挿入とは全く別問題であり、唐突にここで並列して論じることには強い違和感を感じる。ちなみにこっちのミスの方があっという間に命とりとなる。呼吸不全患者、自発呼吸が停止している患者では、気管チューブが食道に誤挿入されれば、その時点から生命の危険性が発生し、刻一刻と増大する。逆にいえば、バイタルサインをモニターしている限り、こっちのミスの方がすぐに気づきやすい傾向にはある。
医療関係者によると、チューブがきちんと挿入されているかどうかは、胃液の吸引や気泡の音を確認するなど複数の方法があり、使用するチューブの種類などに合わせてマニュアルを作成している病院もあるという。
私が問題にしたいのはこの最後のパラグラフである。なぜ問題かというと、この稚拙な文章を最後に付け加えてしまったことで、今回の医療事故の問題点がひどく薄っぺらなものへと卑小化されてしまっているからである。
たぶん記者は、この記事を書くにあたって、知り合いの医療関係者に、ねえ、これってどおなの?と訊ねたのであろう。医療関係者であればまずこう答えるであろう。おかしいなあ、普通は胃管を入れたら胃液を吸引したり、空気を入れて音を確かめたりして確認するはずなんだけどなあ、と。まるでそれをそのまま受け売りで書いてしまったような、とってつけたような文章である。
この最後のパラグラフをお読みになって、みなさんはどのような感想をいだくだろう。
ひでぇ、この病院って、胃管を入れたあとに、胃液を吸引したり、空気を入れて気泡の音を確認したり、そんな基本的な確認さえ怠って、平気で栄養入れちゃうんだ、恐ろしい、マニュアルも無いらしいぜ! 聡明なあなたならそこまでは思わないかもしれないけれど、これを書いた記者はそう思っていたか、少なくともそう思わせようとして書いたのではないかと推測する。
だがマニュアルにしたがって複数の方法で確認したのに結果として誤挿入だった、という可能性も否定できないのである。むしろそっちの方が重大な問題だ。贔屓目に過ぎるかもしれないが、私は胃管を入れたあとに気泡音を確認しない医療従事者が存在するとは思えないのである。実際のデータは知らないが、少なくとも、これまでの気管への栄養剤誤注入事故のすべてが、胃管挿入後の聴診を怠ったことに起因するとは思えない。そうではなく、この事故から学ぶべき最も重要な教訓は、気管への誤挿入は聴診だけでは見逃される可能性がある、ということである。
それではどうすればいいのかという話になる。たとえばX線撮影すれば誤挿入はほぼ確実にディテクトできるのではないか(他にもっと簡便な方法、もっと確実な方法があればご教示願いたい)。その場合、全例に施行するのが無理であればルール作りが必要になるが、聴診で確認できても胃液が引けない場合にはX線撮影するとか、あるいは栄養剤の誤投与こそが問題なのであるから、栄養剤投与が目的の胃管は全例X線撮影するとか、そういったルールになっていくであろうし、すでにそうしている病院も少なくないだろう。
胃管はナースが挿入するケースも多いようだが、すべて個人の責任に帰着することなく、誤挿入がすぐに発見できるシステムを構築し、安心して挿入できる環境を整えるのが病院責任者の責務であろう。
押切先生押し切れず
フォルダを整理していたらむかし先生が大学で教えていたころの押切先生の持ち物の写真が出てきました。
先生が業界を去ってからかれこれたぶん25年ぐらいは経っているので、押切先生がいったいどういう先生だったのか、先生はすっかり忘れてしまったようです。それでも一生懸命思い出そうとして精一杯考えてみた結果、
押切先生とは◯◯外科の先生でありながらときどき研修に来たり仕事を手伝いに来てくれていた先生で、押しの強いのが多い◯◯外科医の中にあって珍しく押しが弱く、押切という名前にもかかわらずいつも押し切れず、そのへんにうっかり置いておいた持ち物には必ず「もえ」と落書きされていた先生
だったような気がしました。
当時これをアップしようとしたらこりゃ個人が特定できちゃうし◯◯外科の他のいやな感じのドクターになんか言われたら困るからダメですとローリーにいわれてやめていたのだが、あれからたぶんもう25年ぐらいは経っているしもうこのブログを見ている人もあまりいないだろうからあげておきます。
マスク美人
むかし先生が大学で教えていたころ、教え子のローリーが「先生、◯◯病院でものすごいマスク美人を見つけました」といってホワイトボードにその顔を描いてくれたときの写真が出てきた。「マスク美人」というのは一種の業界用語なんだけれども、先生はこの業界を去ってからかれこれたぶん15年ぐらいは経っているから、それがいったいどういう定義だったのか、すっかり忘れてしまったようだ。それでも一生懸命思い出そうとして精一杯考えてみた結果、
マスク美人:そのものすごい美人ぶりをマスク程度で隠すことはまったく不可能でマスクをしていてさえもやっぱりひと目でものすごい美人だとすぐにわかってしまうほどのものすごい美人
ということだったのではないかと推測する。
そのものすごいマスク美人の実物を実際に見たことがある人たちにこの似顔絵について訊くと、みんな口をそろえてこりゃそっくりだわと言っていたので、たぶんこりゃそっくりなんだろうと先生も思う。当時これをアップしようとしたらこりゃそっくり過ぎてひと目で個人が特定できちゃうからダメですとローリーにいわれてやめていたのだが、あれからたぶんもう15年ぐらいは経っているしもうこのブログを見ている人もあまりいないだろうからあげておく。
画像にオンマウスしていただけるとわかります。
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