2011/11/30

コトラ16: The Long Blog Entry

プロローグ

あらかじめことわっておくが、このエントリーはほんとうに長い(約二万字)ので、私の書くものに興味があるという奇特な方々の中で、よほど暇を持て余している人以外は読む必要はない。結果的に、おそらく完読するのは私を含めて全国で4名ほどになると予想している。

当ブログは主にスミルノフ教授の筆によるエントリーを掲載しているが、教授は2011年の7月から突然休養して、通称「コトラ」と呼ばれるものが代筆連載を開始した。覚えているだろうか。もしご存知でなければ、すぐにウィンドウをとじたほうがよい。

コトラは約3ヶ月で計14回の代筆連載をこなした。
ところが、第15回目に奇妙なエントリーが現れた。表題はコトラの第15回目の連載ということになっていたが、筆者はスミルノフ教授だったのだ。多くの読者は教授が復帰したと思った。しかし教授は、これは復帰ではなく、コトラの代筆、すなわち代筆の代筆であり、自分はもう少し休養を続けるというようなことを書いた。

したがって、次のエントリーはコトラの第16回目のエントリーだと、誰もが思ったことだろう(いや、誰もがそう思うはずだ、と私は思った……)。

ところが、コトラの第16回目のエントリーは現れず(こうしてたった今現れているわけだが)、何ごともなかったかのように、スミルノフ教授自身の連載が復活したのである。読者としては、これはいったいどういうことなのだろう?という疑問が湧いて当然である(ところが信じられないことに読者からの問い合わせは一件もなかった)。

さて、これから紹介するのは、以上のような教授とコトラの不可解な行動の謎(誰も謎と思っていないんじゃないだろうか、という不安は抑えきれないが)を解き明かす物語である。

そして、その謎を解き明かす役を、世界のミステリィ史上最も人気のある私立探偵にお願いした。したがって、この先は、その私立探偵による一人称で語られることになる。

では、今この文章を書いている、この「私」は誰なのであろう?
そのことについては、物語の最後にまた考えてみよう。あなたが最後までたどり着けることができれば、そして私がそのことを覚えていれば、の話だけれど。

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2011/11/17

謎の陸上動物 ゴマキヒトデ

もうお忘れかと思うが、当ブログのエントリー「コトラ2:なぜ犬だと思うのか」で、最後に出てきた真っ黒なおばけみたいのは何ですかというpuripuri博士からの質問があった。再掲するが、これである。

毛だけからなる何がしかの生物

さすがpuripuri博士、いい質問です。今回は先生が研究に研究を重ねて明らかにした、この動物の恐るべき正体をお見せしよう。

結論を先にいうと、これはゴマキヒトデという陸上動物です。写真では姿かたちが今ひとつ分かりにくいので、先生のイラストで説明しよう。

ゴマキヒトデは、棘皮動物門毛ヒトデ網毛ヒトデ目オカヒトデ科ゴマキヒトデ属に分類される体長140-190cmの陸上動物である。以前よりネパール、ブータンなどで目撃情報があり、人を食べる恐ろしい動物として古くから伝承されてきた謎の動物であったが、1981年に初めて捕獲され、その形態が明らかになった。しかし、生態についてはまだほとんど謎につつまれているのが現状である。

ゴマキヒトデ1

体表を覆う黒い毛のようなものは、当初は腕が幾本にも分裂してできたものといわれていたが、現在では棘化した表皮が毛状に変化したものではないかと考えられている(すなわちウニのトゲに相当する)。普段はその体毛に隠れてなかなか見えにくいが、腕(足)は五本あり、五放射相称構造となっている。それゆえに、どのような方向にも自由に移動することができる。

それでは、1981年に初めて観察された体の下側を見てみよう。

ゴマキヒトデ2

下から見ると五放射相称の腕(足)がよく見える。そして腹側中央に口がある。肉食で、死んだ動物などを食べるが、ときに生きている動物を自ら捕獲して食べることがあるという。

もう少し拡大してみよう。

ゴマキヒトデ3

腹側中央の口には鋭くて硬い歯が多数並んでいるのが分かる。この硬い歯で、たとえ獲物が大きな動物であっても、その骨まで噛み砕くことができるのだ。

さて、動物が獲物を丸呑みする場合、通常は食道を円滑に通過させるために獲物の頭側から飲み込むことが多い(特に魚類は頭側から飲み込まないと鱗が引っかかってしまう)。また、肉食の哺乳動物は頚部を絞めるなどの方法で獲物を絶命させてから食する場合が多い。

しかし(ここからがこの動物の恐ろしいところなのだが)、オカヒトデ科の動物はまず最初に獲物の足を捕らえることが多く、生かしたままで足から食することが多いのだ。ゴマキヒトデが人間を食う場合も同様で、意識のあるまま足から順番に食べていく。このため、食べられる人間は絶命の瞬間まで激しい痛みを感じることとなる。

実際に、ゴマキヒトデに人間を与えたところを見てみよう。

ゴマキヒトデ4

あ、グロ注意って書くの忘れた。もう遅いか。

そろそろ本当のことを言おう。最初の写真は、円山動物園のゴマキである。しかし、円山動物園に行くと、夜行性のゴマキはいつもああいうかっこうをしており、顔も四肢も見えない。だから先生は密かに、あれは顔のないヒトデみたいな動物ではないのかという妄想をいだいていたのだ。

何ヶ月か前にナイト・ズーが開催され、夜に円山動物園を訪れることができた。先生は、そのときに初めて動くゴマキを見た。衝撃をうけた。もちろん、ゴマキの顔や足を見たのも、そのときが初めてだったのだ。

ゴマキ

ああ、ゴマキは生きているのだ、と思った。当たり前だけれど。

ゴマキ2

特に説明の必要もないと思うが、念のために確認しておく。ゴマキはナマケグマである。なまけているクマではなくて、ナマケグマという名前の種類である。たぶん夜行性で昼間は寝ているので、こういう名前になってしまったのだろう。人間と生活サイクルが違うというだけで。ゴマキから見たら、夜寝ている人間こそ、ナマケビトあるいはナマケジンといえよう。


2011/11/14

ル・ニドゥ・ロワゾの記憶

銀座の高級クラブ「ル・ニドゥ・ロワゾ」で、私の隣についた女はミサゴと名乗る大柄の女だった。高級クラブには似つかわしからぬ臭いが漂っていたので、私はつい
「ちょっと磯の香りがするねえ」
と言ってしまった。これでも遠慮して言ったつもりだった。本当は魚臭いといったほうが正解だった。
「あら、そうかしら。わたしはずっとここにいるから気づかなかったわ」
ミサゴは手なれた手つきで水割りをつくり、白身魚の刺身がのった皿を得意気にさし出した。
「あの、この店のママの名前はなんていうのかな?」
「ママはオオタカっていうの」
「オオタカさんか。下の名前は?」
「下の名前? オオタカはオオタカよ」
あまり話は続かなかった。白身魚の刺身をひとつ口の中に入れた。とても生臭かった。
「これ、なんて魚かな?」
「魚の名前? さあ……。でも私はだいだいいつもこれを食べるの。私の子どもたちも大好きよ」
「子ども? そうか、お子さんがいるんだ」
「あらいけない。ここでは口に出しちゃいけないことだったわ。お願い、ママにはないしょにしておいてね」
ミサゴは胸の前で両手を合わせ、すまさそうな顔でそう言った。
店内の女はほとんどが大柄で体格良く、なんとなくみんな私のことをちらちらと見ているような気がした。

「わたしみたいなおばさんだけじゃつまんないでしょ。誰か指名したらどうかしら」
「指名か。誰かおすすめの娘さんはいるかね」
「そうね、今あいてるのは、ツミ、サシバ、ノスリ、チュウヒ……」
「ちょ、ちょっと待ってくれ。なんとなくだけど、肉食系ってかんじがするね」
「え、そうかしら。ひょっとしてお詳しい方なの?」
ミサゴは急に警戒心を強め、鋭い目つきで私を睨んだ。
「えーと……」
今のところ名前だけが手がかりだ。なんとか可愛らしい娘を呼び寄せることはできないだろうか。
「ヒバリちゃん、なんかいるかな?」
「ああ、ヒバリね」
サシバはおもしろくなさそうに鼻からたばこの煙を吹き出した。
「ヒバリはあそこで歌を歌っているわ」
ヒバリは少し離れたステージの上に立ってカラオケで歌を披露していた。
「あーあー、かわのながれのよーにー」
ヒバリという娘の実際の容姿は、私がヒバリという名前から連想する小さくて可愛らしいイメージとはかけ離れていた。
「どうする? 指名する?」
「いや、やめとく」
気まずい雰囲気が続き、ほとんど会話らしい会話もなく時間は過ぎていった。私は頭の中で、可愛らしい鳥の名前を懸命に思い出そうとしていた。
「そうだ、ツグミちゃん! ツグミちゃんを呼んでよ!」
ふっというミサゴの鼻息が聞こえた。
「残念ね、ツグミは今日はお休みよ」
ミサゴは灰皿に吸殻を押し付けた。

「実はわたしももう限界。わたしはどちらかというともっと魚っぽい人が好みなの。これで失礼するわ」
ミサゴが席を立つと、壁際からギャーギャーというけたたましい鳴き声が聞こえた。振り向くとそこには赤ちゃんかごが置かれており、双子の赤ちゃんが黄色い口を大きく開けていた。
「き、君の子かい?」
ミサゴはちょっと立ち止まって半分だけ振り向くと、違うわ、ママの子よ、と言って通路をまた歩き始めた。
ミサゴはどんどん遠ざかって見えなくなった。
いつのまにかヒバリもいなくなっていて、
ステージの上は真っ暗だった。

気がつくとそこは静寂に包まれていた。
さっきより薄暗いような気もする。
しばらくひとりで水割りをすすっていると、落ち着いた雰囲気の和服の女性が近づいてきた。
「申し訳ありません。今日はもう閉店ですのよ」
「あ、そうだったんですか。長居をしてすまなかった。あなたがママさんですね」
そういって立ち上がろうとしたそのとき、私は左腕が熱くなるのを感じた。
反射的に左腕を右手で押さえる。
ゆっくりと右手を離して手のひらを見る。
鮮血がついていた。
ママは両手を腰の前で組んで軽く首をかしげ、
微笑んだまま微動だにしない。
「何にぶつかったんだろう?」と私は言って、
血のついた手のひらをママのほうに向けた。

その瞬間、ママは私の手のひらを鋭いクチバシで突き刺し、 首を左右に激しく振って手掌の肉を喰いちぎった。

あまりの素早さに私は痛みを感じるひまもなかった。
ただその場にひざまずいて呆然とする私。
ママは血のしたたる私の肉をくわえたまま、
壁際の子どもたちに近づいてそれを与えた。

子どもたちは再び一斉に激しく鳴き出す。
黄色い口を大きく開けている。
黄色い口が次々に私の血で赤く染まる。
子どもたちの興奮は最高潮に達する。

「君はいったい、なぜ……」

ママは壁際で首を180度回転させて振り向くと、
大きな翼を広げて飛び立ち、
あっという間に私に飛びかかった。

ママの太くて黄色くて鋭い爪がある足の、
その一方は私の首を絞め、
もう一方は私の胴体をしっかりと押さえつけた。

頭が動かせないまま目線を下に向けると、
鋭い爪がどんどん私の躰に食い込んで、
そのまわりから、
じわじわと鮮血がにじみ出てくるのが見えた。

だけどあまり痛みは感じなかった。
首を絞められて脳への血流が途絶えていたからだ。
ママの首の絞め方はとても上手だった。
だからぜんぜん息苦しくもなかった。

そうやって脳への血流さえ断てば、もう
何をされてもあまり痛くないってことを、
ママはよく知っているようだった。

痛いどころか、むしろ気持いいぐらいだった。

視界にソフトスクリーンがかかったように、
見える物すべてがぼんやりしてきた。

もうまもなく、私は何も見えなくなるだろう。

私はとても幸せだった、と思えた。

ママがそう思わせたのだろう。
さすが銀座の高級クラブのママだ。

それからオオタカは大きなクチバシでゆっくりと私の躰の肉をついばみ始めた。


2011/11/13

野鳥に餌をあげてもいいの?

野鳥にエサをやるな!

ダメに決まってんだろ、このボケ! といいたくなるところを抑えて抑えて、先生は今この文章を書いています。先生のよく行く公園には池があるのですが、そこでこれ見よがしにエサをばらまく人があとをたちません。エサを与える主な相手としては、この池のカモ類がまず第一に考えられますが、実際にエサをばらまくとハシブトガラス、ハシボソガラス、ドバトが大挙して押し寄せます。

カモは基本的に渡り鳥ですが、ここであまり良い思いをさせると渡らなくなる恐れがありますし、また渡りたくても太り過ぎで渡れなくなる、という可能性もありましょう。

そこで野鳥の会などの要望もあり、公園管理者がこの看板を立てたようです。野鳥に餌をあげてもいいのか? いや、ちょっと待ってよ。これこれこういう影響がありますよ、というのがまあ細々と書いてあり、そして最後に、それでもいいでしょうかね? と考えさせるオチになっています。

なぜ、「エサやり禁止!」というシンプルで明快で断定的な看板を立てないのか? そのひとつの背景に、エサをあげる人というのは基本的には優しい人であり、野鳥に良かれと思ってやっているのだから、怒るようなことをしてはいけない、という製作者のスタンスがあるようです。

だがしかし、どうだろう? というのが今回の先生のテーマです。はっきりいって、それは優しすぎじゃね? つーか、この看板、ごちゃごちゃ細かく書きすぎじゃね? そりゃ先生はエサやり反対派だから、いってることはよく理解できるよ。だけど、こんな細かい内容をその場で読んで理解できるのはエサやり反対派だからじゃね? エサやり賛成派の奴らは理屈でごちゃごちゃ説明したってやるときゃやるんだよ。だいたい奴らは最初のこの「餌」って漢字からして読まないんじゃないか?

だからね、やっぱり、こう、もっとシンプルに、ダメゼッタイ的なかんじの方が効果あるんじゃねえかと先生は考えたわけです。そんでね……

この看板の前でぼうっと考えていたら、なんということだ!

マガモ

マガモの夫婦が先生に近寄ってくるんです。メスのほうなんか池から岸にまで上がってきちまった。

人なれしたマガモ

こんなに近づいてくる。これ普通のコンデジだぜ。全く人間に対する警戒心無し。マガモ、お前らほんとうに野鳥か? ほんとはアヒルなんじゃね? 先生は野鳥のプライドを無くしたお前たちにがっかりだね。けっ、先生はエサなんか持っちゃいねえよ。さっさと池に戻りな。まったく。

だけど、マガモたちがこんなふうになっちまってるってことはだ、まだエサやりをしている人がいる可能性が高い。やっぱこの看板、効果うすいんじゃね? もっとガツンといってやった方がいいんだよ。

鳥に餌をやるなこのボケ

だめかな? つい先生の本音が出てしまった。これではほんとうは良い人なのに知らずにエサやりしていた人が傷ついてしまうな。あるいは意固地になってしまって、感情的に反論をふっかけてくる人が続出するかもしれない。もう少し柔らかい表現にしようか。

ドブスに限る

これ、だめだろうか。おばさんとか多いからなあ。これしきじゃあ通用しないかも。男にはぜんぜん効果ないしね。

美男美女は

男と女のプライドをくすぐる形にしてみた。だめかね。だめだろうね。

なんか、先生、あまりにも思いつかなくなったので、ツイッターで相談してみた。そうしたらこんなのもらったよ。

三代先まで

呪い系ね。いいかもしんないよ。先生も人に頼ってないで考えなきゃ。いやー、今日はほんとに調子悪い。ぜんぜん思いつかないもなあ。

ソフトクムーリ

だめだよね、レベル高すぎだよね。

死後さばきにあう

結局、呪い系でまとめてみた。なんかみんなして鳥を嫌いになりそうだよね。きっとだめだろうね。


2011/11/08

今さら風太に会いにゆく、を今さら書く

先生は自分が生きているうちにぜひ会っておきたい動物が二頭いる。それはレッサーパンダの風太君とホッキョクグマのピースちゃんだ。

あー、風太ってあれね、「二本足で立つ」って話題になったレッサーパンダね。何年前だっけ、あれ。でもさあ、あのあと、全国のレッサーパンダが、俺も立てるよ、俺も俺も、って次々に名乗りをあげてさ、結局そもそもレッサーパンダは二本足で立つものだっていうことになったんじゃなかったっけ? そんで今じゃ風太はすっかりすねちまって、逆に二本足で立たないレッサーパンダに成り下がってるっていうじゃない。

ひどい、風太君のことをこんなふうにいうなんて、いったい誰だよ(誰だよって俺だよってか)。

2003年に生まれ、2004年に静岡の日本平動物園から千葉市動物公園にやってきた風太君。運命の2005年5月、見事な二足起立で日本のスターにまでのぼりつめた。

もう5年以上も前のことである。

風太君はその後どうしているのだろう。ブームはもともと去るものだから、いま風太君を語ることについての受け止め方は人それぞれであろう。けれども先生は、なんだかんだいって、どちらかというとマイナーだったレッサーパンダの人気を確立したという功績は、非常に大きいのではないのかな、と思っている。そして機会があればぜひお会いしたいものだと常々願っていたのだ。

その先生の願いは意外に簡単に、最近かなえられた。いまここに、そのときの経緯をレポートすることとしよう。読者諸君はもうお分かりのことと思うが(もしお分かりでなければただちにウィンドウを閉じることをおすすめする)、先生が動物園をレポートするさいには、ある決まりごとがある。それは「円山動物園」というエントリーで初めて用いた手法のことである。このときはわりと好評だったので、いい気になってその後何度も使っていたのだが、そのうちに全くウケなくなってしまった。ウケないと分かっていることをやるのは、いくら先生でもつらいんである。しかし、今さら手を引くわけにも行かない恒例行事なので、またいつものように始めることにする。

風太01
先生が風太君のいる動物園を訪ねたのは、セミの鳴き声もまだ喧しかった夏の盛りのことである。
風太02
正門をくぐると、まずセミの抜け殻が目についた。セミの抜け殻ワンダーランド。道民はセミの抜け殻が物珍しくて好きである。セミの抜け殻を探して動物の檻とは関係ない方向の茂みに入っていく中年の男がひとり。それを怪しげに横目で気にする親子連れたち。自分でいうのも恥ずかしいが、あとでフォルダをのぞいたら、半分ぐらいがセミの抜け殻の写真だった。
風太03
先生は何をしにきたんじゃ。そうじゃ、動物を見にきたんじゃった。いかんいかん。思い出したように方向を変えて歩き出した先生を迎えたのは、先生の大好きなオオヒラタシデムシであった。ここは(よく似たヒラタシデムシもいる)北海道ではないので、これは確実にオオヒラタシデムシであると断言できる。北海道にいるときのように、ちょっとまてよ、これはヒラタシデムシかな、それともオオヒラタシデムシかな(名前の違いからイメージされるほど大きさに違いはないのである)などと悩まなくてもいいのである。その悩まくてもいい、ということが先生はとても嬉しかった。そのためだけにはるばる千葉までやってきた、といっても過言ではないくらい嬉しかった。ところで、ひょっとしたら赤矢印が気になる読者がいるかと思うが、この写真のように胸部表面にやや凹凸がみられるのがオオヒラタシデムシであるという証拠である。ヒラタシデムシはもっと平坦でツルッとしている。道民あるいは来道される方には、この鑑別点をしっかりと頭に入れておくことをおすすめする。
風太04
はっ、いかんいかん。うっかり大好きなシデムシについて本一冊分ぐらい語るところじゃった。先生はいったい何をしにきたんじゃ。そうじゃ、動物を見にきたんじゃった。オオヒラタシデムシでまた時間とSDカードメモリを消費してしまったが、決意を新たにさっそく動物を見にいくぞ。パンダの親子連れとペンギンの親子連れである。円山動物園にもあったな。つーか全国にあるな。全国制覇したいな、これで。
風太05
ぜんぜん風太関係ないじゃん、とかゆーてる君、ここからが本番だよ。ほれ、鳥の群れ。普通最初はフラミンゴとかが出迎えるところが多いんだけどな。千葉はなんか緑っぽい鳥の出迎えじゃ。
風太06
じゃーん、ウサギ。つーかウサギでいいのか、これ。耳ひとつ取れちゃってるけど。まあウサギだろうなあ。しかし恒例とはいえ、こんな方向性でいいんだろうか。
風太07
じゃーん、ゾウなり。アフリカゾウかアジアゾウか微妙なところだけど、額が割れていないからきっとアフリカゾウなりね。まじつらい。
風太08
じゃーん、馬の親子ナリよ。ひひーん。つーか、せんせー最近行ったっつーのウソじゃん、だいぶ前じゃん、去年じゃん、っていう件に関してはもういいから。だからタイトルに「を今さら書く」って付け加えてあるじゃん。ね、許して。だってこの日はさあ、去年の夏だろ、風太君のことなんて先生はこれぽっちも書こうという気にはならなかったんだな。だって先生の頭の中はマイ・シャローナでいっぱいだったからね(参考)。
風太09
先生快調じゃん、というふうに見えるだろ。だけど、この動物園の恐ろしさを知ったのはこの後からだったんだな。動物以外のネタになりそうなものを探しながら歩く先生なんだけど、それがなかなか見つからない。余計なものがないんだよ、この動物園は。
風太10
そして広いんだ。歩けど歩けどもね。暑いしさ。それでだんだん体力を消耗していくんだ。恐ろしい動物園だったね。とにかく広大で、それでいてシンプルなんだ。動物園というよりは巨大な公園と呼んだほうがよさそうだったね。と、そこで思い出す。ここは動物園ではなく、動物公園だったということを。
風太12
だから、もうそろそろ本題の風太君の話にはいっていいだろ?いいだろって、最初から風太君の話をしろやって怒ってるだろ?
風太11
なんかあれだよな、
風太君とチィチィの相合傘も、
風太君の写真も、
いい感じに色褪せちまってる。
それがまた時の流れを演出してるんよ。
風太13
おお、本物のレッサーパンダを発見!
(いいのか、こんなに早く本物を出しちまって)
寝ている、寝ているぞ。
たしかに立っていない。
これが風太君だろうか?
風太14
ちょっと顔を見てみよう。あ、かわええ……。
しかし、さっきの写真とは顔が違うから、これは風太君ではないな。
なーんて写真で分かるほど先生はレッサーに詳しくないぞ。
後から考えた結果なんだけど、当時チィチィはコウタとエイタを子育て中。
ユウタ、風花、風鈴はすでに他の動物園に移動していた。
したがってこれは、風美、チイタ、クウタのうちのどれかだろう。
うーむ、一家の大黒柱である風太君はいったいどこに?
風太15
おや?
(さすがにめんどくさくなってきて一言で済ます)
風太16
おやおや?
あなたはひょっとして?
(かなり安易なオチだなと自覚しつつ)
風太17
風太君! (と、書くまでもないよな)
風太18
先生はついに風太君と対面した。
そこらへんの小学生はみんな風太君風太君と言いながらその頭をなでまくっていた。
付き添いのじいさんも風太君の頭を思わずなでてしまっていた。
いったいこれまでに何人の国民が風太君の頭をなでたことだろう。
風太君の頭はピカピカだった。(完)
風太19
さて、ここまでいったい何人がついてきているのか、先生は全く分からねえんだけども、もしついてきてるんだとしたら、かなり偉いので、先生が会った本当の風太君の写真を貼っておこう。たしかに二足起立はしなかったけど、元気に走りまわっておられたよ。(ほんとうに完)

というわけで、このエントリーは終わる。終わるけれども、少しエピローグ的なものを付け加えておこう。つーか、いよいよここから本題に入るのかもしれない。

たしかに風太君の二足起立はマスコミを賑わせた。けれども、その後すぐに、他のレッサーパンダも二足起立できることが次々と報道されることになる。例えば、風太君の祖父、安佐動物公園のロンロンも二足起立する。つまり、風太君の二足起立は祖父譲りってわけだ。

風太君のニュースの後、全国のレッサーパンダが俺も二足起立できると名乗りを上げる。例えば、先生の記憶する限りでも、長野、長崎、福岡、横浜、釧路(ただし釧路の場合は3秒間だけ)というぐあいに日本各地からそのニュースは届けられた。

今では風太君はあまり立たなくなった。むしろ現在は妻のチィチィの方が立ち時間が長いという。息子のチイタ、クウタも立つらしい。今は山口県の徳山動物園にいる娘の風花の娘(すなわち風太君の孫)も立つ。

現在秋田市大森山動物園にいる風太の息子ユウタは、立つどころかジャンプまでできるらしい(Jumping Red Panda - YouTube)。

さてこうなると、二足起立はそもそもレッサーパンダに普遍的な性質だったのではないかという話になる。おそらくあの時だって、レッサーパンダに詳しい人はそのことを知っていたのだろう。それにもかかわらず風太君はスターになった。なぜだろう。もういちど当時の一番有名な写真を見てみよう。

あんときの風太

二足起立といってもいろいろある。風太君の二足起立は、その独特の姿勢の良さが際立っていたのである。しかも立ち時間は30秒以上と長く、その立ち振る舞いにはやはり他のレッサーパンダを圧倒する雰囲気が備わっていた。先生は、風太君の胸の白い縦線がどうしてもチャック(ジッパー)に見えて、これは人が入った着ぐるみに違いないと思ったほどだった。

先生の学生時代の友達に、熱狂的なホロヴィッツ・ファンがいたのだけれど、彼は晩年のよれよれのホロヴィッツがただピアノの音を一音鳴らすだけでも何万円も出して聴きに行く価値があると言っていた。当時は変わった奴だと思ったが、かつて立ち姿で一世を風靡したけど今は立たない風太君を一目見に行った先生は、その気持が理解できるようになった気がした。


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