今さらハシビロコウを見にゆく
ハシビロコウが日本でスターになったのはいつのことだったろう。
動かない鳥がいるという。テレビ出演の際には、40分以上動かなかったために、スタッフがビデオの故障を疑ったという逸話を持つその鳥の名は 「ハシビロコウ」
この土屋さんの記事が2005年なので、たぶんブロガーやチャネラーがハシビロコウを話題にし始めたのもこの頃ではないかと思われる。
もう5年以上も前のことである。
ハシビロコウは「動かないトリ」として有名になり、動かないから写真に撮りやすいのかどうか知らないが(だって先生は撮ったことがないのだから)、天下の大都市東京が誇る上野動物園にいることもあり、憎き東京人たちによると思われるすばらしい写真が次々とネットにアップされていった(例:ハシビロコウ祭会場はこちら!)。
そして5年以上ものあいだ、田舎者の先生はそれらの写真を指をくわえてただ見ているしかなかったのである。この鳥好きとして知られる世界的ブロガーの先生がだよ!
だってハシビロコウは上野動物園を含めて日本の何ヶ所かにしかいないのだから!(2005年当時はたぶん3ヶ所、今でも4-5ヶ所じゃないかな。そこまで調べるのめんどくさいし、かといってこのご時世、不正確なこと書くとクレームがくるので、あえて曖昧な書き方をした。《どうも最近は文章を無駄に長く書きたがる傾向にあるなあ先生は》)
しかし最近、先生はついにハシビロコウのいるある動物園を訪れることができたのだ!(上野動物園ではない、とだけは言っておこう)
訪れたからには、ブロガーとしては何らかの形で発表しなければならない。しかし、すでにハシビロコウの写真がネットに溢れてしまっている今、いったいどう趣向を凝らせばいいのか?
すでに日本国民の約半数は、自分のパソコンの中に、ハシビロコウフォルダか秋田犬フォルダのどちらかを持っている(ということが、「ハシビロコウフォルダ」で検索すると明らかだ)。それほどハシビロコウの自前写真はすでにポピュラーであり、今さら他人が写したハシビロコウ写真を見せられることの価値は乳首小指の先よりも小さい(乳首の先はかなり価値があると考え直したので訂正)。
そうして何ら解決策も思い浮かばないまま、ほぼ途方に暮れた状態でこのエントリーは書き始められたのである。たぶん読者の反応としては、罵倒してくれれば良い方だと受け止めざるを得ず、大方は無反応であろうことがすでに予想できる。
と、ごたくを並べて字数を稼いできたが、これは別に筆記試験の答案でも作文の宿題でもなく、字数を稼ぐ必要なんか全くないことに今気づいたので(実はさっきから気づいていたのだが)、そろそろ始めることにしよう。
- ハシビロコウがいるという動物園。その動物園に入ると、私はときめきを抑えられずに、一目散にハシビロコウがいるという檻へ駈けていった(もちろん嘘である。順路に従っていろいろな動物を見ながらたどり着いたのである)。
ああ、見えてきた!(今回やたら感嘆符が多いのは、きっとこないだ読んだ三島由紀夫の影響であろう)
おお! あれが多部未華子さんハシビロコウか!(この件に関してのクレームは受け付けません) - コンデジを片手に近づいてみる。
おお、むこうから寄ってきたぞ。
動かないトリだって聞いてたけど、動いているなあ。 - よーし、もうちょっと寄ってこい。
あれ? 止まっちゃった。
そこで動かなくなるのだろうか。 - あれ?
あっちを向いて遠ざかっていくぞ。
ちくしょう、追いかけるか。 - と思ったら、
急にこっちを振り向いて、また近づいてきやがった。
どんどん近寄ってくる。
チャンスチャンス、今までで最接近。
シャッターを押す。 - あれ? 目がボルトで隠れてしまったようだ。
- ああ、またそっぽ向いて遠ざかっていく。
- ん? またこっちを振り向いた。こっちへ来るのか?
- と思ったら、また向こうへ遠ざかっていく。
- ん? またこっちを振り向いたぞ。
またフェイントか? もうだまされないぞ。
いや、違う。今度はほんものだ。
すごい勢いでこっちへ近づいてくる。
チャンス! チャンス! シャッターチャンス! - あわわわ、最接近、最接近!
押せ押せシャッターを!
ああ、ピントがピントが…… - はあ? 俺を通り越して去っていく!
- 人をバカにしたようなアクビ!
- あのう、動かないトリって聞いてたんですけど、
話しが違うんじゃないっすか(怒)って、あの……
コワ……、もういいです……
結論:この動物園のハシビロコウは激しく動くトリだったので、とても撮りにくかった。すまん。
今日はヌーボー解禁日です!
毎度おなじみ、スイーツブロガーのスミルノフ教授です(って書き出しでよかったべか)。
さあ皆さん、今日は皆さんも待ちに待ったヌーボーの解禁日ですね! え?来月じゃなかったっけ?っていってる君、遅いよ遅いよ。先生はさっそくいただいちゃいましたよ。やっぱり解禁日にいただかなくてはヌーボーとはいえませんよね。
よわい感じでおとしてみたけど、おちてるかな。ヌーヴォーじゃなくてヌーボーだからな。そのあたりもきっともりもとは計算してるんだろうな。
でもワインならわかるけどさ、どら焼きのヌーボーっていったい何よ? そこで新聞広告の下の方に書いてあるとおり、「もりもと」で検索! でも検索したら、なんか「マンションのもりもと」だかって会社の広告が上に出て、先生かるくショックうけました。
つーことで、今年収穫したばかりの小豆をつかってるってことなんだね! 一応納得!
さて今年を振り返るにはちょっと早いんだけれども、どら焼きヌーボーで思い出しちまった。今年は1月から新機軸としてスイーツブログにしてみるっと宣言したんだったね。まー先生も落ち目だし、いよいよつまんねーことしか思い浮かばないからさあ、いっそスイーツブログだってことにしちまって、目の前に出てきたスイーツをお題にとにかくなんか書く、スイーツを目にして何かを思いつきゃあ、内容はスイーツにはこだわらねえ、いやむしろ意識してスイーツから離れたことを書いたら意外におもしろいんじゃね?という趣向であった。つまり、重い腰さえ上げればなんかかんか書けんじゃねえか?ということでもあった。
しかし思い返せばそれはヘロヘロになった心不全状態の心臓にカテコラミンを投与して鞭打つような仕打ちだったような気がする。そこにニュージーランドの大地震と、日本の大震災だ。スイーツでーすなんて書く気になるわきゃないわな。それでもこのときの心境はどっかこっかに書いてはいたので、あとでそれをこっそりまとめたものが、過去ログをたどっていただければ見つかると思う。
自分でいうのも変かもしれないけれど、スイーツシリーズの中にも、良いものはいくつかあったような気がする。だけど、すっかりエントリーを「点」でとらえる時代になってしまったので、前後のつながりでたまに良いものがあってもなかなか伝わりにくいのがちょっと残念だ。トップページから訪れる人は今や最盛期の10分の1ぐらいである。
それでも数少なくなったとはいえ、スミルノフ教授を確実に「線」として、あるいはもう一歩進んで「面」として追ってくださっている方々がまだまだいらっしゃることを、私はよくよく知っています。この場を借りてお礼を申し上げたいと存じます。それではよいお年を。来年もよろしくお願いいたします。
いや、さすがに年内はまだもう少しは書くと思うよ。
Fallingwater
■キユーピーハーフ 「おいしく、シンプルに。キユーピーハーフ」
福山雅治が出てくるこのCMを見ていたら、激しく既視感を覚えた。僕はここに行ったことがある。
これが僕の撮った写真。プリントをスキャンした。たぶん95年頃だと思う。わりと有名な建造物で、写真もこういう構図のものが多い。おそらくここに立てば誰でもこういう感じの写真が撮れるようになっているのだろう。でも僕には写真を撮ったときの記憶が全くない。
僕はこの頃、ミノルタの安い一眼レフを持っていたのだが、もっと手軽に持ち歩けるコンパクトカメラが欲しくて、近所のベストバイにいってキヤノンのオートボーイを200ドルぐらいで買ってきた。でも、この写真がそのどちらで撮られたものなのかも、記憶にない。
いちど職場のボスが、お前を撮ってやろうと言って僕からそのオートボーイを取り上げたことがあった。そして張り切ってファインダーを覗いて、チアーズかなんか言いながらシャッターを押したのだけれど、うまくシャッターがきれなかった。まわりの人間が、カメラも扱えないのかとボスを冷やかしたので、ボスは顔を真っ赤にして「ジャパンのちゃちなカメラが悪い」と怒った。僕はそのとき、ボスはジャパンじゃないどこの国のカメラが良いと思っているのだろうか、と考えた。ジャパン以外のカメラなんて僕にはなかなか思い浮かばなかった。コダックとかだろうか。
ほら、つまらないことばかり思い出す。
建造物の名前は「Fallingwater」。カウフマンといういかにもデパートっぽい名前の富豪の邸宅として作られた。
なぜこのCMにFallingwaterなんだろう。キユーピーハーフとの関連性があるのだろうか。撮影秘話とかを見てみたけれど、なんの説明もない。それどころかFallingwaterの名前もなんのクレジットもない。福山雅治は日本のスタジオで撮影されたようだ。
「キューピーハーフだって? カロリーが半分なのかい? そりゃあいいね、二倍使えるってわけだ」と、太っちょジェリーなら言ったことだろう。もちろん太っちょジェリーなんて友だちはいなかった。今作った。
「日帰りで行けるおすすめの場所かい? そうだなあ、こっから76号をぶっ飛ばして、ピッツバーグを抜けてさらに南東に1時間ぐらい走ると、フランク・ロイド・ライトっていう有名な建築家が設計した邸宅があるよ」
そんなふうに誰かにすすめられた気がする。今作られた記憶かもしれないけど。
「フランク・ロイド・ライトって誰だっけ? ふーん、日本の帝国ホテルを設計した人か。ははあ、なるほど」
日本の帝国ホテルを設計した人。納得できる一行ほどの説明が手に入れば、僕はもうその人のことをよく知っているも同然だった。僕がフランク・ロイド・ライトっていう名前を初めて知ったのはそのときだろうか。それとももっと前から聞いたことがあっただろうか。判然としない。どうだっていいことだけど。
まあそれで、この建物の何がすごかったというのだろう。しゃれたデザインであったことぐらいは記憶に残っているものの、何だかさっぱりだ。ネットで調べてみると(便利な時代になったものだ)、日本語では落水荘というそうだ。それでカンチレバー構造という滝の上にせり出しているところがすごいらしい。
ネットは便利だ。どこにでも行ける。当時の僕は職場でメールアカウントはもらってたけど、ウェブを見る権限はなかった。そもそもウェブサイトというものの存在意義がまだよく分かっておらず、まったく関心もなかった。僕は日本にいる仲間たちとは英語でメールのやりとりをしていたけど、だんだん英語で考えるのが面倒になってきて、そのうちローマ字でメールを出すようになった。でもそれも限界にきて日本語に対する渇望が果てしなくなり、毎日相手を変えては便箋10枚ぐらいの手紙をBICのボールペンで書いていたような気がする。
たぶんその頃、僕のすぐ近くで、山中伸弥先生や村上春樹先生は、今ある姿に向かって確実に奮闘していたはずなんだ。いったい僕は何をしていたのだろう。僕の記憶は何もかもがあやふやだ。僕がこの国で学んだ成果といえば、せいぜいメジャーリーグのチーム名と都市名を結びつけることができるようになったぐらいだ。
カフカとはチェコ語でカラスのこと、というのは本当なんだろうか? よく調べてみたら、ニシコクマルガラスのことだって分かったよ!
村上春樹の「海辺のカフカ」では、主人公の名前カフカがフランツ・カフカからの借用であると共に、チェコ語でカラスという意味をあらわすとされ、そのことが物語の中の重要なキーワードとなります。
でも本当に「カフカ」はチェコ語でカラスという意味なのだろうか、先生はちょっと心配です。
なぜかというと、先生の個人的な印象ではあるのですが、村上氏は鳥の名前、というか鳥そのものに、あまり興味がないと思えるからです。先生の知る限り、村上氏がその小説の中で鳥の種名を記載したことは数えるほどしかありません。「ねじまき鳥」に出てくる「かささぎ」ぐらいでしょうか。これだって種名というよりは「泥棒かささぎ」という曲の名前です。たまに鳥が登場したとしても、大概は「名前の知らない鳥」などの極めて素っ気無い記述が目立ちます。
そこへいくと、同氏の短編「中国行きのスロウ・ボート」をカヴァーした古川日出男氏はすばらしいです。
僕はたくさんの鳥を見る。ふたたびパンフレットによれば、多種の野鳥がこの庭園を訪れている。留鳥のセキレイ、カルガモ、ゴイサギ、カイツブリ、渡り鳥のホシハジロ、ハシビロガモ、オナガガモ、&c.。ただ残念ながら、僕が最多目撃数を誇ると感じた――だって経験したんだから!――野鳥については、ふれられていない。カラスだ。 種類を細説するならばハシブトガラス。知能派の、ふてぶてしい雑食主義者。
――古川日出男 二〇〇二年のスロウ・ボートより
これは主人公が浜離宮恩賜庭園を尋ねた場面。いったい古川氏はバードウォッチャーでしょうか。なかなかしぶい鳥たちの名前の連呼に続き、単に「カラス」ではなく「ハシブトガラス」について熱く語る古川氏です。先生は常々、たとえ鳥に興味はなくとも、ハシブトガラスとハシボソガラスぐらいは見分けて欲しいものだと考えていますが、ただ「カラス」とだけ記載することを許せなかった古川氏はただものではないと思います。この小説はこのあとさらにユリカモメも登場し、そしてハシブトガラスの駆除の是非についての熱い論議が繰り広げられることになります。
一方、その元になった村上氏の作品ではどうでしょうか。
図書館の玄関の脇にはどういうわけかにわとり小屋があり、小屋の中では五羽のにわとりが遅い朝食だか少し早い昼食だかを食べているところだった。(中略)そして煙草を吸いながらにわとりたちが餌を食べているところをずっと眺めていた。にわとりたちはひどく忙しそうに餌箱をつついていた。彼らはあまりにもせかせかしていたので、その食事風景は、まるでコマ数の少ない昔のニュース映画みたいに見えた。
――村上春樹 中国行きのスロウ・ボートより
このように、ただの「にわとり」でおしまいです。これがウィスキーだとかジャズだとかだったらここで細かいウンチクを出すくせに、鳥となると実に素っ気なく、白色レグホンも名古屋コーチンも出てきません。さらに、ただにわとりを見つめるだけで、特に興味があるとも思えず、どこかひとごとで、要するにどうでもいいようです。
本当に「カフカ」はチェコ語でカラスという意味なのだろうか。日本野鳥の会所属の先生としては、かなり心配になってきました。
そこで登場するのが前々回も参考にした「世界は村上春樹をどう読むか」です。この中で、チェコの翻訳者トマーシュ・ユルコヴィッチさんが、会場の日本人からずばりそのままの質問を受けてそれに答えています。
会場1(日本)「海辺のカフカ」のなかで、主人公のカフカという名前は、チェコ語では「からす」という意味だと説明されています。実際にはどうなんですか? ユルコヴィッチ からすには似ていますが、少し背が小さくて、色もちょっと違う鳥の名前です。しかし大きく言えばからすの一種ではあるので、逐語的に訳しても、チェコの読者に意味は伝わると思います(チェコ語のカフカkavkaは「コクマルガラス」を指す。作家名のカフカkafkaとは綴りは違うが、発音は同じ――沼野注)。
――「世界は村上春樹をどう読むか」より。
この記述で大方の読者は納得するでしょう。これ以上何を求めるの。しかし、野鳥マニアの先生としてはこれぐらいでは満足できません。この記述を頼りに、先生はチェコ語とカラス科の分類の旅に出たのでした(もちろんネットの世界での話ですけど)。興味の無い方のために先に結論を短く書いておきます。まず、ユルコヴィッチさんの答えですが、「カラスとは似ている、でも違う鳥、だけど大きく言えばカラスの一種」というのは、よく読むと訳が分からなくなりますけど、これは生物分類学的にいっても実に完璧な正解を言い表している、ということが分かりました。それから沼野充義さんの註釈にある「コクマルガラス」ですけど、おおまかに言えば正解、細かくこだわると不正解ということになります。
それではまず沼野氏の注釈にでてきたコクマルガラス、これは先生も実際に見たことがあり写真も撮ってるのでお見せしましょう。
これです。通常よくみるカラス(すなわちハシボソガラスとハシブトガラスのことです)よりもひとまわり小さくて、写真のように首と腹が白いものがいます(全身真っ黒なのもいますが)。
これで決まりでしょうか。先生は「kavka」で画像検索してみました。
やはり、ちょっと小さめのカラスの画像がたくさん出てきました。でも先生の撮影したコクマルガラスとは少し印象が異なります。この中の画像の一枚が「Kavka obecná」という名前だったので、それでさらに画像検索をかけてみます。
だんだんとその姿が明確になってきました。これは先生の撮影したコクマルガラスと非常によく似た種ですが、厳密には違います。これは学名Corvus monedula、日本名はニシコクマルガラスといいます。ためしに「ニシコクマルガラス」で画像検索してみましょう。
ほらね。先生の撮影したただのコクマルガラスとは目に白目があるところが違います。
というわけで、沼野先生のコクマルガラスという答えは、コクマルガラスの仲間という意味なら正解、ただし種名としては不正確ということになります。すなわち、厳密な正解としては次のようにいうことができます。
チェコ語でカフカといえばKavka obecnáのことであり、これは学名Corvus monedula、日本名はニシコクマルガラスである。
コクマルガラス(Corvus dauuricus)の英名はDaurian Jackdaw、ニシコクマルガラス(Corvus monedula)の英名はJackdawまたはEurasian Jackdawです。すなわち日本で単にコクマルガラスといえばコクマルガラスを指しますが、ヨーロッパで単にJackdawといった場合にはニシコクマルガラスの方を指すことになります。それは分布をみればもっともなことで、ヨーロッパに分布するのがニシコクマルガラス、ロシアからアジアにかけて分布するのがコクマルガラスだからです。したがってコクマルガラスはしばしば日本でも見ることができますが、これまでに日本でニシコクマルガラスが目撃されたのはわずかであり、もちろん先生も実物を見たことはありません。
Corvusというのはスズメ目カラス科カラス属を指すのですが、近年コクマルガラスとニシコクマルガラスに関しては、CorvusではなくColoeus(コクマルガラス属)として分けようという話になっているようです。だから、Coloeus dauuricus、Coloeus monedulaと書くのが正しいのかもしれません。しかし、未だにCorvus表記が多いのも事実です。
いずれにしても、コクマルガラスとニシコクマルガラスは、カラス属(Corvus)の本流とはいえません。しかし、同じカラス科として非常に近い位置にはあります。ですから、冒頭のほうで引用したチェコの翻訳家ユルコヴィッチさんの答えは、まさに正解といえるのです。
それでは、いわゆるカラス、たとえばハシボソガラス(学名Corvus corone、英名Carrion Crow)なんかは、チェコ語でなんというのでしょうか。ハシボソガラスはチェコ語でVrána obecnáです。つまり、一般的なカラスのことはチェコ語でVrána(ヴラーナ)というようです。
本日の結論です。
- チェコ語でカフカといえば、普通はコクマルガラス属のニシコクマルガラスのことを指す。
- 普通のカラス(カラス属のカラス)はチェコ語では一般的にヴラーナという(と思う)。
Toll-like Haruki
僕はなんとなく、ノーベル賞、今年は誰か日本人が受賞するだろうという淡い期待をいだいていた(その根拠はお分かりですよね)。淡い期待というか、どことなくそれが前提のようにさえ思い込んでいた。きっと山中先生がもらうんだろうな、とか。
ところが医学生理学賞は山中先生じゃなかった。
え、どうして?
僕はちょっと混乱した。
そうすると、ひょっとしてハルキか?
そういう予感が頭をよぎったのだった。
ハルキがノーベル賞って、ハルキファンはどうなんだろう。僕は自分がハルキファンかどうかも分からないので分からない。ただ実際に受賞ということになっちゃうと、記者会見とか授賞式とか、日本のマスコミの前で思いっきり正体を晒すことになるわけで、ハルキがそんなことになっちゃっていいのか? という、自分でもよく分からない不安で胸がどきどきした。そしてさらにその後のことも想像した。ざっと数作に目を通しただけで訳知り顔になってるキャスターの御説を聞くはめになるんだろうな、とか。表向きはお祭り騒ぎだけれど、ネットでは賛否両論の喧騒が渦巻くことになるんだろうな、とか。やれやれ。
無駄な想像と心配。結局ノーベル文学賞はトランストロンメルだった。もともとトランストロンメルかアドニスだといわれていたから、さして驚きはなかった。どちらにせよ、ふたりとも80歳越えだ。ノーベル賞も世界を相手にしなければならないからなあ。そうすると対象者も自ずと増えてくる。その結果文学賞も、年功序列でいくとなると受賞すべき人がつまっちゃっているんだなあ、とか思った。正直にいうと、とてもほっとしている。これで静かな環境で、ハルキの未読作を読み続けることができるという安心感だ。といっても、未読なのはエッセイとか翻訳ものしか残っていないのだけど。あれ、ひょっとして僕はハルキファンなのだろうか。
静寂にひとまず安心した僕だけれども、今度は逆に、まるでジョブスが受賞したみたいな日本での盛り下がりぶりにはちょっと寂しくなったりもする。山中先生を後回しにした医学生理学賞も、受賞者の直前の死去ばかりが報道され、研究内容の方はさっぱり注目されなかった。自然免疫…ですか…。……。なにそれ?と問われることすらない。寂しー。繰り上がりで日本人が受賞していれば、また状況は違ったのだろうけれど。
Toll様受容体ってなんだっけ。手元にあった敗血症に関する本の巻末の用語集をみた。
Toll様受容体(Toll-like receptor: TLR) ――Toll(ショウジョウバエの初期発生において形態形成に関わる受容体)に似た構造を持つ膜貫通型受容体。LPS(lipopolysaccharide)やPGN(peptidoglycan)の認識に関わると考えられている。
ふーん、なんか今ひとつ正確さに欠ける記述のような気がする。ほんとに理解して書いているんじゃなくて、借りてきた言葉をただつなげているみたいな未熟さ。だって、そりゃそうじゃん。著者は僕だもの。10年近く前の本だ。僕のことだから、きっとウィキペディアとかから適当にかき集めて書いたに違いない。ウィキペディアあったかな、当時。
なんだか遠い昔のような気がする。Toll様受容体が今やっと受賞するんだったら、iPS細胞なんかまだまだ先のことなんじゃねーか、っていう気がした。でもそれでいいんじゃねーか。だって、若いうちにへたにノーベル賞なんかもらっちまったら、なんか大変そうだもの。それこそ死ぬ間際に、墓への土産としてもらうのが理想なんじゃねーべか。ハルキもマイペースであと3つぐらい長編書いてさ、そんで死ぬ間際にもらうのが一番いいよ。そうだそうだ、それがいいよ。
- 教授御尊顔
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