古い館の恐ろしいトイレ
築何十年かは経っているであろう古い館を訪れた日のことです。その歴史的建造物の中でひとしきり文学や美術作品を楽しんだあと、先生は尿意をもよおしました。
歴史を感じさせるトイレのガラス戸をギギギと音を鳴らしながら開け、そして古ぼけた陶製の便器に向かって両足をやや広げながら一物を取り出そうとしたときのことです。先生の一物はかつて経験したことのない恐怖によって取り出せないほど縮み上がってしまいました。
なんとトイレにジェイソンがっ!
よいお年を。
Happy Xmas (War is Over) 2009
■セバスチャン・サルガド AFRICA 〜生きとし生けるものの未来へ〜
ごぶさたしています。ジョン・レノビッチです。今年、もう写真展は終わってしまいましたが、サルガドが来日しましたね。私はその写真展のころからずっとサルガドの写真について考えて続け、今日ここに何かを書こうと思っていたのですが、結論から先に申し上げると、よい言葉が浮かびません。サルガドの写真をはじめて見た瞬間、私は圧倒されました。そのとき心に生じた変化は、やがて「美しい」というありきたりな言葉に置き換えられていきます。
上の写真、説明するまでもないほど有名ですが、エチオピア空軍の攻撃を避けるため、夜通し歩いてカレマ・キャンプに到着した難民たちです。サルガドの写真には批判もつきまといます。世界の悲惨を「美しく」撮っている、神聖めかしたレトリックであると。サルガドは人間の尊厳の美しさを捉えたといいます。美しく撮ったのではなく、そこに美しさがあったのだと。どんな人にも光は注ぐ、という発言には、たしかにカトリック的な背景も感じます(ブラジル人=カトリックという発想もまた短絡的ですが)。
スーザン・ソンタグが彼を名指しで批判したことも有名です。サルガドは多くの悲惨をひとまとめにしている。同情は的を失い抽象化される。苦しみや不幸はあまりに巨大でそれを変えることは不可能だと人々に思わせると。
ソンタグが問題にしているのは私たちがこのような写真を見たときの、それでいったい自分に何ができるというのだろうという無力感、やるせなさではないでしょうか。わざわざ名指しで批判したのも、裏を返せばソンタグもまたサルガドの写真の美しさに圧倒されたからではないかと私は思います。
悲惨な場面を美しく表現することの是非については、さまざまな難しい議論があるので、ここでこれ以上触れるのはやめにしましょう。私は写真家でも政治家でも評論家でもありません。
では写真を見る立場のひとりの普通の人間として、この無力感をどうしたらいいでしょう。同じような無力感に関するコメントを、私が4年前に「ハゲタカと少女」について書いたときにもいただきました。
私はここでスミルノフ教授が返答しているとおり、悲惨な写真を見て衝撃を受けたからといってすぐに行動を起こさなければならないということはないし、何もできない自分、恵まれている自分を責める必要はないと思います。私だって自称ミュージシャンとはいえ、やっと食いつないでいる無名の人間です。ジョン・レノンやボーノではないので、音楽で世界を動かすことは不可能です。
でも卑下することもありません。たとえ国を動かすリーダーになれたとしても、自国の目先の利益ばかりに縛られて、世界を変えることなんてなかなかできないのです。
私は無力だと、とりあえず落ち込んでいていいのです。今感じた無力感、挫折感は、将来あなたが国際的な平和に貢献する肥やしになるかもしれません。土木工事が得意だったあなたはふとしたきっかけからアフリカに水をもたらすかもしれません(例)。ビジネスチャンスを求めて海外出張した先で地雷撤去の達人になるかもしれません(例)。もちろん、なんの縁もきっかけも訪れないかもしれない、でも少しだけ周りに優しくなることで、あなたの周りからそういう人たちが、何かのムーブメントが起きるかもしれない。それでいいんじゃないだろうか。
2年ぶりの登場なので、いまひとつぎこちない乱文をお許しください。よいクリスマスを。
■ Happy Xmas (War Is Over) - John Lennon
■WAR IS OVER! (IF YOU WANT IT)
Special thanks to Suchi.
ジョン・レノビッチ
満1歳を迎えたシロクマツインズ
円山動物園のホッキョクグマの双子が12月9日で満1歳を迎えました。お誕生日当日に行くことはできませんでしたが、満1歳と4日目の今日、お会いすることができました。一般公開から本日まで、先生たちもときどき訪れてはその成長を確認してきましたよ。
参考までにこれまでの記録です→雪が好き(3月20日)、ホッキョクグマ(3月20日)、今日のシロクマ(5月19日)、ホッキョクグマ双子のその後(7月9日)、9/24シロクマツインズ(9月24日)
そして今日は母親のララと同じくらいに大きくなった双子にびっくりしましたよ。
↓母親ララにプールに誘われっぱなしの息子。気が弱い方だからこっちがキロルなのかな?
↓そしてもう一頭はひたすら自分の世界、ひとり遊びに夢中です。こっちが独立心旺盛なイコロだろうか。
↓さあ、もう先生は簡単に見分けがつきますよぉ。これがさっきまで母親と遊んでいた方のキロルです。
↓そして不良っぽい歩き方のこっちがイコロ。間違いないね。鼻の模様も違うし。
自信ありそうなふりしたけど、いやほんとはね、正直いって先生はどっちがどっちなのか混乱してしまってさっぱり分からないんだ。だいたい双子の名前自体、まだ正確に覚えられないんだよ。先生はくやしいので、皆さんも道連れにすべく、混乱させるクイズ出しますね。
さあ、問題です。昨年の暮れに札幌市の円山動物園で生まれて今年無事に満1歳を迎えたホッキョクグマの双子の名前は何というでしょう。以下の選択肢の中から正解を番号でお答えください。
- イコロ と キロル
- イコル と キロロ
- イロル と キコロ
- イロロ と キコル
どうですか。分かりましたか。ちょっと難しすぎたかもしれませんね。じゃあ、選択肢をもう少しやさしくしてみますね。
- イコロ と キロル
- ココ と セイタ
- ユッコ と ヤマト
- げんき と ゆうき
- タイガ と ココア
- モリゾー と キッコロ
- エビゾー と マオ
- のいる と こいる
- さくら と 一郎
さあ、正解が分かった方は円山動物園入場の際に番号で答えてください。きっと係の方が不思議な顔をしてくれることでしょう。
参考リンク:
■双子の白クマ赤ちゃん通信 ツインズ専属カメラマン広報の樋泉さんのブログ
■シロクマツインズin円山動物園 うにさんのツインズ専用ブログ
■ツヨシにあいたい 円山ホッキョクグマの写真で有名な方
ところでもう一問出します。
ロシアの世界的に高名な教授だと名乗り、くだらないブログを書いている、今日で48歳を迎える人といったら誰でしょう。
ちまちま小樽文壇史+偉人物語展
これに行ってきたところです。昨年の「小樽ちまちま文豪展」のパワーアップヴァージョンのようです。昨年はちょうど北海道に帰国したばかりでゴタゴタもあり行けませんでした。
で、通常ならばここで写真とかアップして、行ってきました素晴らしかったです、とか書くところなのでしょうけど、それじゃなんだか今ハヤリの「ブログ」ってやつみたいで、先生はちょっと気恥ずかしいし、だいいち面倒じゃありませんか。「小樽ちまちま文豪展」とか「ちまちま小樽文壇史」でググってください。レポートしてるブログがたくさん出てきますから。終わり。
ところが家に帰ってきてソファで夕刊を広げてると、こんなニュースが先生の目に飛び込んできました。
先生は驚きました。だってたった今、愛する「瀧ちゃん」へ書いた手紙を読み直す小林多喜二を見てきたばっかりなのだから。これは何か運命的なものを感じずにはいられません。だから今、先生は書いています。
瀧ちゃんへ書いた手紙を読みながら幸福感に浸っている小林多喜二です。小林多喜二は一般的なイメージとは裏腹に、よく話す明るい人物だったそうです。高山美香さんの真骨頂は、その人物の日常的な一面を鋭く切り取るところにあるのでしょう。作家の内面の奥深くに入り込むのではなく、高山さんは近所の知り合いになりきって「小林さーん」と訪れてふすまを開けているのです。するとちょうどそこには幸福感に浸った小林さんが居たのですね。
手紙をよく見るとやはり「ねえ瀧ちゃん」で始まる手紙です。これから畳の上に置かれたその封筒に入れて投函されるのでしょう。ディテールへのこだわりにも心をくすぐられます。
というわけで、今回の展示では伊藤整の日本文壇史のミニチュアが出迎えてくれます。猫もよく登場します。右側の猫の耳がかけているのが残念でした。
1時間に30本のタバコを吸う芥川龍之介。タバコは吸殻をほぐして材料にするそうです。本も古本の紙を素材に作るそうです。
奥さんが猫好きの大佛次郎、飼っていいのは定員15匹までだと決めたそうですが、実際には16匹、奥さんによると1匹は「お客さん」だそうです。
実際にこの目で見たかった、代表作の伊藤整です。
整理魔・伊藤整が愛用したすぐに目当ての封筒が見つかる回転棚、これは本の編集者の方が作られたそうです。文学館の奥に行くと、本物が展示されていてびっくりします。
整理用の封筒には向きが逆になってもすぐ分かるように二ヶ所に項目を書きます。それから新聞記事を切り取るための愛用のハサミ。そこまで再現するか。
愛用の「ニコン」のカメラ。その向こうには漱石に関するある発見をし、ふっふっふと笑みを浮かべる伊藤整がいます。
基本的に頭に動物のっけるのお好きなようです。
高山さんは写真やその人に関する記述を参考にするそうです。「肖像画」はウソであることが多いので、本人であるという裏付けがないかぎり参考にしないそうです。
そこで問題となるのが西郷隆盛です。
これは西郷隆盛のミニチュアではなくて、上野の西郷さんのミニチュアです。なぜなら、上野の西郷像が本人であるという確証がないからなんですね(諸説ありますが)。西郷ドンの本当の顔は写真も残っておらず今や誰も分かりません。だからあえて「銅像のミニチュア」にしたのではないかと先生は推測します。
「銅像」だから鳩もとまるし、フンも落ちたりしてるわけです。ディテールの素晴らしいところです。
石川啄木は両親から溺愛され、まわりには神童ともてはやされ育った、だから「俺って特別」という強い自尊心と王子様体質は死ぬまで変わらなかったそうです。寝転んで空想にふけるのが好きだった啄木……と、ここまできて、先生は自分を啄木に重ねられずにはいられなくなりました。
そして高山さんは、友人や家族が苦労して借りた金を惜しげもなくつかって豪遊する啄木を「バカ王子」と手厳しく評していますが、それでも見捨てられなかったのは、「人を惹きつけて愛させる才能」が備わっていたからではないかといいます。先生と啄木の違いはきっとその才能の違いですね。
これらの作品は1冊の本にまとめられ、今年の8月に「一葉のめがね」というタイトルで出版されています(クレール)。基本的に左にミニチュア写真、右にイラスト文章で偉人たちを紹介しています。最初は人生見開き2ページでまとめられちゃかなわんなあとか思ったりもしたのですが、それは全くの杞憂でした。
そうだよなあ、ニュートンだってダーウィンだって、ものすごいこと思いついたのにそれを発表したのはその何十年も先なんだよなあ、先生だってまだまだ焦ることないぞお、とかすっかり勇気をもらいました。一家に一冊あってよい本。
先生としては、ミニチュア展は全国展開してほしいし、「一葉のめがね」ももっと広く売れてほしいなあ、と思いました。いや、瀧ちゃんがそう言ってます。
Goole日本語入力
美奈さんご無沙汰しております。ご存知のように先生も周りに流されやすい性格なので、話題のGoogle日本語入力をさっそくゲットしてみようカナと思い立ったが吉日は数日前のことでした。
というわけで既にGoogle日本語入力で書いているのですが、初めに「みなさん」と打ったとたんに、驚くほどたくさんの種類の「みなさん」候補が現れて嬉しくなり、ついつい巨人の星の日高美奈さんを思い出して「美奈さん」を選んでしまいました。それに「さっそくゲット」とか「みようカナ」とか「思い立ったが吉日」なんて言葉、もちろん先生は普段使いませんけど、せっかく入れたばっかりのGoogle日本語入力なので、まずは流されるように使ってみようかなと思ったまでです。これってマジで文体変わっちゃう可能性ありますね。便利なのか恐ろしいのか。
■ ASCII.jp:Google日本語入力が描くIMEの未来像とは?
ま、その辺のマジメで難しい論議は上記記事などに任せて、われわれはまずは気軽にその使い心地を試してみましょう。
はじめに先生が昔使っていた専門用語を試してみました。もう全然問題ないですね。だって日本中のあらゆる分野の専門家がパソコンに向かって打った結果が知らず知らずのうちに学習成果となっているわけですから、どんな分野でも問題ない、あったとしても時間とともに無くなっていくのではないでしょうか。今の落ちぶれた姿からは想像できないかもしれませんが、先生にだって昔こういう類の専門用語を駆使して本とか書きまくった時代もあったのです。当時は必要にせまられてMicrosoft IME用の医学用語辞書をわざわざインストールしていました。先生の知り合いにはATOKの医学辞書じゃなきゃだめだといって、そのためにわざわざATOKを入れてる人もいましたが、もうそんなことも必要なくなりますね。
とりあえず「単語」に関しては強力なようです。ウェブからの学習能力を応用しているのですから、特に固有名詞の変換に関しては向かうところ敵無しでしょう。
「すみる」と打ったところでスミルノフが出てきたのはさすがですが、Google日本語入力にいわせれば、スミルノフといえば「教授」ではなくて「大佐」のようです。先生はとても残念です。先生は皆さんのより一層の努力を期待します。
ふん、所詮ネットから学習してるわけでしょ、こういう分野には強いわけだ。
いや、やはりあらゆる分野に強いようです。先生が無類の相撲好きということはもうご存知でしょうけど、最近は幕下三段目どころか、学生や社会人の相撲も見ています。今日も全日本選手権をテレビで見ていたのですが、松永六十四って昨年のアマ横綱なんですよ。みなさん知りませんよね。しかも、なんて読むか分かりますか? 六十四と書いて「むとし」と読むんですよ。それをGoogle日本語入力ったら「まつながむ」まで入力したところで「松永六十四」を選び出す、本当に恐ろしい奴です。
ちなみに「むとし」だけじゃ「六十四」は出ないんですよね。あくまでも前アマ横綱の松永六十四なわけです。
でも、みなさん、ちょっとは警戒してくださいよ。何人ものノーベル賞受賞者が何をおっしゃろうが、科学技術の発展に絶対的な価値があるかどうかはまだ誰にも分かりません。あんまり便利だ便利だと単純に喜んでいては、かの平民ゴールド先生に怒られますよ。
さっそく先生のGoogle日本語入力はそのお言葉を学習したようです。
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