スーミーポイント
実を言うと◯◯科を辞めたんだけど、どういうわけか患者が来るのでペインクリニックはしょうがないから続けようかと思ってる。幸い透視室もあるので神経破壊や高周波熱凝固のような難しいブロックも何度かやった。だが世の中にはそんなブロックしても無駄だという一派もいる。
整形外科医の世界にも、腰椎ヘルニアや脊柱管狭窄の腰痛・下肢痛は神経の痛みなんかじゃなく筋肉の痛みだとする一派がいる。神経根や脊髄が圧迫されたからといって痛みが出るわけがない、出るとしたら麻痺だ。だから手術で痛みが取れるのはウソであり、痛みがとれるのは偶然で筋緊張が取れるからだという。
その急先鋒が石川県小松市で開業している方で、なんでもかんでもトリガーポイントブロックだけで治るという。僕も最近まではトンデモだと思っていた。だが実際に手術で良くならない人は大勢いるし、ヘルニアや高度腰椎変形があっても何でもない人がいるのも事実だ。
昨日、大学病院のペインクリニック歴も長くいろんなブロックを経験しているうるさいタイプの腰痛下肢痛患者さんに、適当にごまかす気持ちでトリガーポイントブロックしたら、今日痛みが全くなくなりましたと電話がきた。まじで? 神経根の高周波熱凝固までした入院中の下肢CRPS患者にも、今日はやることがなかったので仕方なくトリガーポイントをしたら、なんかいい!って言う。まじで?
これいいかもしれない。俺って天才で、俺のトリガーポイントは特別なのかもしれない。トリガーポイントブロックは小松市の先駆者がいるので、俺のは名前を変えて特別なものとして差別化したほうがいいだろう。
ベリーダンスをコアリズム、短気集中エクササイズをブートキャンプと名づけて、何か過去のものと違う特別なものだと思わせるように。
ひとつだけ
忌野清志郎がこんなに大きく取り扱われるのは正直意外だったなあ。僕はトランジスタラジオのアルバムとかルージュマジックとかHISは時代に流されて買ったけど、そんなに好きかって聞かれるとそうでもないし、僕より若い世代はその後の反核反原発とか君が代とかのイメージが強いんだろうけど、僕はあんまりピンとこなくて、その後はほとんど聞かなくなった。だからお葬式とかが大々的に報道されるのもどこかひとごとのように冷めた目で見ていたんだけど、どういうわけか今日になって、僕は突然、すっかり忘れていたことを思い出した。僕はナマ清志郎を見たことがあるってことだ。なんでこんな重要なことを忘れ、そして本人の死を見てもすぐに思い出さなかったんだろう。
それは僕が大学生のときだった。坂本龍一のラジオ番組が公開録音されるというので、聴衆として参加した。そのときのサプライズゲストが清志郎だったんだ。ほんとに予告なしで途中で突然入ってきて目の前を歩いていったから、まじで驚いてすごく得した気分になった。このとき教授が、清志郎の新曲か何かをうちのカミサン(矢野顕子・当時)がほめてたよみたいな話をしたら、清志郎が、ボクは矢野にほめられればそれでいいんだ、みたいなことを言ったのが、とても純朴に感じられて印象的だった。
清志郎の方が年上なのに、矢野と清志郎の関係はまるで母親と無邪気な子どものようだ。こうして清志郎が歌詞の「わたし」と「あなた」を「ボク」と「キミ」に変えて矢野の「ひとつだけ」を歌っているのを聞くと、まるでこの曲は最初から「天国の清志郎」のために作られたものであるかのような錯覚に陥る。そして途中で一小節早く歌いだしてしまう清志郎を何事もなかったかのように見事にフォローする矢野にはまさに母親のような大きな愛が宿っている。
2日後の追記:あれからYouTubeでタイマーズとかも見た。当時の僕があまりピンとこなかったのは、音楽に限らず、芸術というもので具体的直接的なメッセージを表現するのはかっこ悪い、と考えていたからだろう。特に怒りというものは、勢いに任せてそのまま表現すればするほど、あとでかえって切なくなる。社会との衝突や生き辛さは芸術のパワーの源ではあるけれども、そのことに正直過ぎると、結局自分自身が追い詰められてしまう。そのような芸術家はたいてい短命だ。清志郎は年をとってからそのことに気づいたのと、本気で怒っているようにみえても全部が全部本気ではなくて、たぶんおどけていた部分も大きかったのではないか。それで意外にも多くの人に愛され、58歳まで生きられたのだと思う。だとすれば病気で亡くなったことは全く不運で皮肉なことだが、もしもっと長生きしていたら、その間僕がタイマーズを思い出すこともなかったろうし、清志郎について僕が何かを書くなんてことは考えられないことだった。これも何かの啓示なのだろう。
SSRIの功罪
SSRIは悪い薬じゃないですよ。ただ、今までの三環系とかと比べて抜群に安全で抜群に使いやすいかというと、そんなことはないです。効かない上に具合悪い、それでますます量を増やされるという悪循環に陥っている患者も多いんです。
明らかな利点は、大量服毒されたときの致死率が低いってことだけじゃないかな。
三環系でも抗コリン作用や抗ヒスタミン作用が弱いものはいくらでもあるし、そういう副作用が強く出ない程度の少量を処方するという手もある。
たとえば高齢者、介護中のうちのオヤジにはトリプタ10mgだけ処方してるんだけど、抗コリン作用のおかげで夜中にオシッコと騒がなくなったし、朝までしっかりぐっすり寝てくれるし、最近の眠くならない抗ヒスタミン薬が効かなかった鼻水もぴたっと止まった。
副作用も使いようってやつですよ。
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