2002/03/01

ついてて良かった…パラレルの巻

そもそも私に、こんなWEBを公開したいとまで思わせた張本人は、私が使用している「○社」の特殊研究用ソフトであった。その苦労の顛末は、”某「○社」のダブルMさん”で一応終結した。あれから一年が経つ。実は毎年この時期は、われわれの業界で一番大事な全国学会が行われる時期であり、データの最終整理やプレゼン資料作りに追われる時期なのである。

昨年の一騒動が終わり、プレゼンも無事に終了した後、もちろん、この一年間、私は遊んでいたわけではない。また新たな研究プロジェクトを立ち上げ、新たな機器を導入して、新たなデータを採取し続けてきたのだ。そして、その新たな機器に接続されたパソコンには、新たな特殊解析ソフト「Mxxx」がインストールされていた。

昨年のように、解析ソフトを自分のパソコンにインストールすることだけに、無駄な時間を消費するのはイヤだ。そこで私は、今回は、測定機器に接続されたデスクトップ・パソコン上だけで、すべての解析を終わらせるつもりだった。と、ところが、作業を進めるうちに、そのパソコンは次第に挙動不審になっていった。何故か知らぬが、そのパソコンはWindows98SEであった。これだけのでかい仕事をさせると、すぐにリソース不足で、どうにもならなくなってしまうのである。リソース不足を解消するために、スタートアップでも弄りたいところではあるが、様々な測定用の周辺機器が複雑に繋がっており、下手に弄れば測定不能に陥る可能性がある。

くそー、なんでSEなんだ。冷却CCDカメラを駆使してビデオレート以上の高速画像を扱うのに、SEは明らかに力不足じゃないのか? んー、やっぱ許せん、○社(いや、正確には○社製品ではないのだが、○社も深く関わっているのである)。

そしてついに、MOドライブまで挙動不審になってしまった。解析を終えて、そのデータをMOにバックアップ、ところが、MOは取り出せず、取り出すためにはいちいち再起動しなければいけない事態に。ついに、一日の平均再起動回数は30回にも達するようになった。んー、これはさすがにやってられん。

歴史は繰り返す。ソフトの種類こそ違うが、私はまた一年前と同じように、特殊な解析ソフトを我がレッツ君にインストールするはめになった。しかし、今回の私とレッツ君は、去年とは違う。私はいろいろ経験をつんだし、レッツ君にはすでにWin2000がインストールされている。簡単だ。

さて、CD-ROMもここにあるし。ぱぱっとインストールしちゃうか。え?なになに?IDとCODEを入力しろだって?

早くも第一障害である。そんなものもらったかなー。なんせ、世間知らずの研究者は、書類の整理と保管が大の苦手である。数日後、夢の島のゴミの山のような書類の中から、やっとの思いで、IDとCODEが記された書類を発見した。それにしても、このCODEとやらは何なのだ。英数字が複雑に組み合わさり、40文字もあるではないか。慎重に入力し、インストールを始める。

え?ダメだって?そうかー、CODEの入力ミスかなー。この「l」って実は「I」なのかなー、それとも「1」なのかなー。なにせ、40文字もあるので、そう迷い出したら、考えられる組み合わせは無数になってくる。何度やってもダメだ……。

数日後、ゴミ箱のようなダンボール箱が散乱する実験室から、一枚のフロッピーディスクを発見。お!これか?きっとこれがないとダメだったんだー。今度は、CD-ROMに加えて、その怪しいFDを接続した状態でインストール開始。しかし、虚しくも結果は同じ。そのFDは、単に私のIDとCODEが記録されているだけのものであった。

世間の建前は、「いちソフトウェア、いちパソコン」である。もちろん、ソフトをコピーしたり、他人のCD-ROMを借りて自分のパソコンにインストールするのは違法である。だが、建前はもっと厳しく、例えば自分が2台パソコンを持っていたとしたら、ソフトウェアも2本買わなくちゃいけないのである。ひょっとしたら、このソフト、一度インストールしたら、もう他のパソコンにはインストールできない仕組みになってるんじゃないだろうか。もしそうだとしたら、私は明らかに違法なことをしようとしているわけで、それで、メーカーに問い合わせるのを躊躇していた。

それにしても、この「プロテクト・キー」がありません、っていうアラートは何なのだろう。インターネットで検索してみても、よく分からない。そうこうしている内に、学会は迫ってきている。唯一このソフトがインストールされているデスクトップ機は討ち死に寸前。これはもう緊急事態である。別のパソコンにインストールするのが違法だとしても、事情が事情だけに、メーカーに相談するしか方法がない。

そして、私はついに、その「R社」の日本代理店の技術者の方にメールで相談した。即日回答をいただいたが、その答えは、 「プロテクト・キーがないとインストールできないんです。プロテクト・キーは、パラレル・ポートにささってます。」 なんと、プロテクト・キーとは、プログラムとか英数字とかの類ではなくて、物質であったのか!さっそくデスクトップ・パソコンを裏返してみると、パラレル・ポートに2x1x5cmほどの物体がささっていた。これがプロテクト・キーかぁ……。

私はそのプロテクト・キーを取り外し、さっそくレッツ君に取り付けた。

そう、私のCF-B5ERには、パラレル・ポートがあるのだぁ!

以前、CF-B5ERを選択した理由として、シリアルやパラレルの存在をあげた。古い形式のインターフェースを残している松下の姿勢に、声高く尊敬の念を表したわけだが、内心、シリアルはともかく、さすがにパラレルって使うかぁー?っと、やや虚しいものを感じながら、一度もパラレル・ポートを使わずに一年が経ったのだが、人生何が吉であるかは、やはり年月が経ってみないと分からないものなのだ。

かくして、プロテクト・キーを挿入した状態で無事にインストールが終わった。ところが、ひとつ気に食わない事態が判明した。このソフトは、インストール時だけではなく、常にプロテクト・キーが装着されてないと起動しないのである。同じIDを持つプロテクト・キーはこの世にひとつしかないわけで、つまり、このソフトは複数のパソコンにインストールすることはできても、複数台で同時に使用することはできない。やっぱり、「いちソフトウェア、いちパソコン」なのである。

プロテクトキー

上図は、そのプロテクト・キーをCF-B5ERのパラレル・ポートに挿入した様子である。一応、メーカー名にはボカシを入れてある。いつもこの状態で持ち歩くのには抵抗があるし、かと言って、別々に持ち歩くと、キーをなくしてしまいそうでこわい。

研究分野でのソフトには、このように、プロテクト・キーという物体をもってして、物理的強制的に一台のパソコンに使用を限るものが意外に多い。思い出してみたら、この研究室でも、電気泳動のゲルを撮影するのに使用しているコダックのソフトが、この方式を採用していた。

紫のプロテクトキー

上図、iBOOKにUSB経由でゲル撮影用のデジカメを接続しているが、USBポートに紫色のプロテクト・キーがささってないと起動しない。

ゲル・イメージは、TIFFやJPEGのような単純で汎用性のあるファイルとして扱えるので、全く不便は感じなかった。しかし、懸念の「R社」のソフトの場合は、特殊な形式の動画ファイルであり、解析ソフトがカギを握っている。そもそも測定機器自体に莫大な研究費が支払われており、そのソフトを使う人間はその測定機器を使用する人間に限られている。それなのに、何故ここまでするのか……。というと、そこが研究者業界の認識の甘さ……と突っ込まれそうではある。


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