2014/09/22

古今東西ロコモーション!―56種類のカヴァーを集めてみた―その1:世界がヒット曲を共有していた古き良き60年代の巻

1962年のリトル・エヴァによる大ヒット曲、ロコモーションのカヴァー・バージョンをネットで探し続けていたら、なんと56種類も集まってしまった。ロコモーションというたった1曲のカヴァーを追い続けただけで徒労に終わるかとも思ったが、最後には世界のポップ・ミュージック全体の歴史の流れが見えてきた……。今回は、その1:世界がヒット曲を共有していた古き良き60年代の巻!と題してオリジナルを含めた18種類を紹介します。

「ロコモーション」は、1962年のリトル・エヴァによる大ヒット曲で、カヴァーとしては、グランド・ファンク・レイルロードのハードロック・バージョン(1974年)、カイリー・ミノーグのエレクトロポップ・バージョン(1988年)が有名ですが、他にも数多くのカヴァーバージョンが存在します。

ふとしたきっかけで、そのカヴァーをネット上で可能な限り収集してみようと思い立ったのですが、果てしなく見つかるロコモーション・カヴァーの数々に途中で嫌気が差し、こんなことをして何になるのかと思い始めました。

しかし終わってみると、60年代前半には人種や国を超えてすでに数多くのカヴァーが存在していたこと、70年代にはグランド・ファンクに先駆けてカヴァーしていたロックバンドが存在していたこと、カイリー・ミノーグのカヴァーに至る土壌として、70年代後半のディスコ・サウンドのカヴァーや、80年代ヨーロッパ・エレクトロポップのカヴァーが数多く存在していたことなど、なかなか興味深い知見が得られました。

そこで、先生の収集したロコモーションのカヴァーバージョン全56種類を、せっかくですから全て披露しましょう! 今回はその1:世界がヒット曲を共有していた古き良き60年代の巻!と題して、オリジナルを含めた18種類を紹介します。

注1)原則としてYouTubeで音源を聞くことのできるものに限定しました。興味のあるものはYouTubeへのリンクをクリックして試聴してみてください。

注2)リリース情報はDiscogsで調べました。興味のあるものはDiscogsへのリンクをクリックして確認してください。Discogsに情報の無い場合はAmazonへのリンクを貼りました。なお、コンピレーションアルバムの音源しか存在していないものもあるので、表記した年号は必ずしも初出を示すものではない可能性があります。

注3)サムネイルは原則としてレコードまたはCDジャケットの画像としますが、文字やイラストだけのジャケットの場合は、ミュージシャンの姿が分かる画像に差し替えたものもあります。

注4)たくさんあるので、先生の独断でオススメのものには、☆印をつけました。参考にしてください。

それではどうぞ!

その1:世界がヒット曲を共有していた古き良き60年代の巻

No.0 リトル・エヴァ Little Eva - The Loco-Motion(1962年、アメリカ)

リトル・エヴァ
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ロコモーションはジェリー・ゴフィン、キャロル・キング夫妻の作詞作曲によるヒットナンバーで、1962年のリトル・エヴァによってレコーディングされたものがオリジナルです。リトル・エヴァは1943年アメリカ生まれ(2003年没)の黒人女性で、ゴフィン・キング夫妻のメイドをしていたところ、歌の才能を見出された、とされています。ここが出発点となるので、さわりだけでも是非お聞きください。また、60年代の、特にアメリカ国内において、歌い手が黒人か白人かは重要事項なので、あえて表記していきます。

☆☆☆ オリジナルなので当然必聴です!

65年頃からはオリジナルの楽曲が増え、その結果カヴァーされる曲も分散、減少し、ポップス界はオリジナル曲重視の時代へと突入していくことになるのですが、それまでは、ヒット曲はみんなでカヴァーするのが当たり前な時代でした。それにしても、リトル・エヴァが発表するや否や、世界中でほぼ同時にロコモーションのカヴァーが多発する様には驚かされますよ。

そんな怒涛の60年代、以下に続きます!

No.1 マリオン・ウイリアムス Marion Williams - The Locomotion(1962年、イギリス)

マリオン・ウイリアムス
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Embassy Recordsはイギリスのカヴァー専門のレコード会社で、何人かの専属の歌手を抱え、当時のヒット曲をカヴァーしてはせっせとリリースしていたようです。マリオン・ウイリアムスはその中の一人としてクレジットされた名前ですが、詳細は全く不明。同名の有名なゴスペル歌手がいますが、別人だと思われます。
当時のポップス界はヒット曲をカヴァーすることが慣習であり、異なる地域へはその地域の人によるカヴァーを通して紹介されるのが当たり前でしたが、カヴァー専門のレコード会社まであったとは驚きです。

No.2 シェリー・ファバレス Shelley Fabares - Locomotion(1962年、アメリカ)

シェリー・ファバレス
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シェリー・ファバレスは1944年アメリカ生まれの白人女性で、50年代の子役の頃から現在まで、映画やテレビなどで幅広く活躍しています。最近ではスーパーマンのアニメの声優として知られているようです。60年代はアイドル的な歌手としても活躍しており、かの有名なJohnny Angelを最初に歌ったのは彼女であり、62年にはビルボードチャートの1位を獲得しています。

No.3 シルヴィ・ヴァルタン Sylvie Vartan ‎– Le Loco-Motion(1962年、フランス)

シルヴィ・バルタン
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シルヴィ・ヴァルタンは1940年ブルガリア生まれのフランス育ち。デビュー当初はアメリカン・ロックやポップスのフランス語カヴァーを歌って国民的なアイドルとなりました。ロコモーションもフランス語で歌っています。この翌年の1963年に発表したLa plus belle pour aller danser(邦題:アイドルを探せ)の大ヒットで、世界的に知られるようになっていきます。

☆☆ フランスが世界に誇るアイドル歌手。ロコモーションをヨーロッパに紹介した功績は大きい。

No.4 伊東ゆかり 伊東ゆかり - ロコモーション(1962年、日本)

伊東ゆかり
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日本でも世界に1年も遅れること無く、1962年に伊東ゆかりが、音羽たかし(あらかはひろし)の日本語による訳詞でカヴァーしています。デビュー曲がクワイ河マーチであることからも分かるように、元々は欧米曲のカヴァーを歌う人です。オリジナル曲を歌うようになるのは1965年からで、このことから、日本のポップス界も、欧米の流れを忠実に踏襲していることが垣間見えます。ちなみに、ネット上での訳詞の表記が、あらかわひろし、音羽ひろし、などと混乱しているようですが、「音羽たかし」、別名義が「あらかは ひろし」、というのが正しいようです。

☆☆ ロコモーションを日本に紹介した功績は大きい。訳詞も素晴らしい。稚拙な歌詞と思われるかもしれないが、原曲の歌詞の内容もこんなもんです。

No.5 フローレンス・パシー Florence Passy - The Locomotion(1962年、フランス)

フローレンス・パシー
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情報が非常に少ないのですが、60年代初頭のフランスの女性歌手のようです。シングルを数枚リリースしている模様。いわゆるシャンソン風の歌声です。

No.6 デア・ドール Dea Doll - Loco-Motion(1962年、ベルギー)

デアドール
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Dea DollことJeannine Ulensは1948年ベルギー生まれの白人女性。オランダ、ベルギーのアイドル歌手として活躍したらしいが、現在はアメリカに住んでるようです。ちょっとなまった英語でアイドルらしい若々しく弾むような歌声です。

No.7 ラス・エルマーナス・ヒメネス Las Hermanas Jimenez - La Maquinita(1962年、メキシコ)

ヒメネス姉妹
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Hermanasは姉妹という意味。エルビラとエレナのヒメネス姉妹による女性デュオ。いわばメキシコのピーナッツといったところでしょうか。スペイン語なので、ロコモーションではなく、マキニータ!です。南米らしいノリを期待したいところですが、なぜかリズムはマーチのような頭打ち。

☆ スペイン語の響きが新鮮。

No.8 パット・ブーン Pat Boone - The Locomotion (1963年、アメリカ)

パットブーン
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パット・ブーンは1934年アメリカ生まれの白人男性歌手で、50-60年代ではもっとも成功した歌手のひとりでしょう。パット・ブーンもカヴァーしたことで、アメリカ国内で黒人女性歌手のオリジナル曲が男女の白人にカヴァーされたこととなり、ロコモーションは晴れて国民的な曲になったのだといえます。パット・ブーンは古くからエルビスのヒット曲などを積極的にカヴァーしており、リリースしたレコードも膨大な枚数に上ります。あまりにも膨大過ぎて、このロコモーションがどのレコードに入っているのかさっぱり分からないのですが、信用できない筋からの情報によると、録音されたのは63年から65年の間ではないかということです。カヴァー・キングと呼びたいほどカヴァーを吹き込んでいますが、90年代にはメタルのカヴァー・アルバム(邦題:メタルバカ一代!!!)まで出しています。

No.9 ザ・ヴァーノンズ・ガールズ The Vernons Girls - The Loco-Motion(1962年、イギリス)

ヴァーノンズガールズ
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リバプールのヴァーノンズ・プールスというサッカー賭博を運営する会社の広告塔として結成された、主に白人女性から成るコーラス・グループです。テレビ番組などで活躍しました。多くのメンバーが入れ替わりましたが、在籍したメンバーの中からは、後に何名かの有名歌手が生まれたようです。スクールメイツ(ヤングメイツ)みたいですね。

No.10 バート・ブランカ Burt Blanca - Le Locomotion(1963年、ベルギー、フランス)

バートブランカ
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バート・ブランカは1944年ベルギー生まれのロック・ギタリストで、ベルギーではロックの祖として崇められています。60年代はキングクレオールズといういかにもロックンロールっぽい名前のバンドを率いていたようです。YouTubeを聞く限りフランス語で歌っていますが、英語版があるのかどうか不明。
脱線ですが、バート・ブランカはホームページが笑えます。
(音量注意!→burt blanca

No.11 レス・パイレーツ・アベック・ダニー・ローガン Les Pirates avec Dany Logan - Le Locomotion(1963年、フランス)

レスパイレーツ&ダニーローガン
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1960年に結成されたフランスのロックンロール・バンド、ダニー・ローガンとパイレーツ。他の曲も漁って聴くと、プレスリーやシャドウズの影響を受けながらも、伝統にとらわれない60年代ヨーロッパ・ロックンロールの奔放さを感じることができます。

No.12 シフォンズ Chiffons - The Locomotion(1963年、アメリカ)

シフォンズ
YouTube
Discogs

シフォンズは63年にデビューした四人組の黒人女性ガールグループ。デビュー曲、He's So Fineの大ヒットが有名ですが、その後の育ての親はリトル・エヴァと同様、ゴフィン・キング夫妻であるといえます。

No.13 ミゲルリオス(ミケリオス)Mike Ríos - Locomotion(1962年、スペイン)

ミケリオス
YouTube
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ミゲルリオス(Miguel Ríos)は、1944年スペイン生まれの歌手、俳優。60年代はロックンロール歌手ミケリオス(Mike Ríos)として、ヨーロッパ・ロックンロール界スペイン支部を担っていたようです。もちろんロカビリー風なアレンジ。後年はミゲルリオスとして活躍し、ベートーベンの「喜びの歌」が有名なようで、聴いてみるとなかなか感動的でよかったです→Miguel Rios - Himno a la alegria。すっかり余談になりますが、この喜びの歌のイントロ聴いたとき、暴れん坊将軍が始まるのかと思いました。

No.14 クラウディオ・モリ Claudia Mori - Quello che ti dico(1964年、イタリア)

クラウディオ・モリ
YouTube(TV)
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クラウディオ・モリは1944年イタリア生まれの女優。先生の好きな映画ソドムとゴモラにも出ていたようですが、誰役だったのか全然思い出せません。完全にアイドル歌謡ですね、ベケェ!ベケェ!言ってます。

☆ イタリア語のベケェ!が可愛らしい。

No.15 チェスラウ・ニーマン Czesław Niemen - Locomotion(1964年、ポーランド)

チェスラウ・ニーマン
YouTube
Discogs

1939年生まれのポーランドの歌手で、Niebiesko-Czarniというバンドに在籍していたようです。後々にはヤン・ハマーとも親交を持ち、ロック・キーボーディストとしても活躍。

No.16 イケッツ The Ikettes - The Locomotion(196?年、アメリカ)

イケッツ
YouTube
Discogs

イケッツは、基本的にはアイク&ティナ・ターナーのバッキング・ボーカル・グループであり、後年は多数のメンバーが入れ替わっています。60年にティナ・ターナーのレコーディングに参加したのが始まりですが、黒人女性三人組のガールグループとしても、61年から65年にかけて多数のレコードを発表しています。ロコモーションは、今のところ2007年のコンピレーションアルバムに未発表として収録されたものしか見つかりませんが、録音時期はわかりません。おそらく60年代ではないでしょうか。

No.17 アイク&ティナ・ターナー Ike & Tina Turner - locomotion(197?年、アメリカ)

アイク&ティナ・ターナー
Amazon(MP3)

60年代をちょっと飛び出してしまいますが、イケッツの親分、アイク&ティナ・ターナー(60年代から70年代に活躍した黒人ソウルデュオ)もカヴァーしているようなので、あげておきます。残念ながらYouTubeにはありませんでした。いくつかのコンピレーションアルバムに散見され、Locomotion、The Locomotion、The Loco-Motion、The Locomotion - Re-Recordingと、タイトルもバラバラで収録されていますが、いつ録音されたものかよくわかりません。おそらくWorkin' Togetherの頃の、1971年前後ではないだろうか?と推測しています。

――以上で60年代は終わり、まとめです。

60年代で驚くべきことは、リトル・エヴァがオリジナルを発表した1962年、その年のうちに、ヨーロッパ全土や南米、日本にまでカヴァーが広がっていることでした。そしてだいたい1964年頃までには、女性男性を問わず、黒人白人ヒスパニックを問わず、性別と人種を超えた様々な人々によるカヴァーが完結していた、と言えるでしょう。

これは特に60年代のアメリカ国内で顕著だったことですが、(今でも保守的な地域では)白人は白人による音楽、黒人は黒人による音楽しか聞きませんでした。かのロックンロールも、エルビス・プレスリーが登場しなければ黒人だけの音楽で終わっていたことでしょう。

ですから、多種多様な人々によってカヴァーされるということは、その曲が幅広く知れ渡るためにとても重要なことだったのです。当然のことながら当時は今よりも伝達手段が未発達でしたから、ひとつの楽曲はカヴァーによって世界に広がったのです。ロコモーションはその典型的な例といえましょう。

60年代も後半に入ると、ポップスの世界ではオリジナリティが価値を持つようになり、楽曲自体が大幅に増加し、カヴァー曲は分散、または減少していくことになります。

また、フランスやベルギー、ポーランド、スペインのロックンロール・ミュージシャンたちがカヴァーした例をあげましたが、こういったヨーロッパのロックロールバンドは、音楽性という面でアメリカやイギリスよりも柔軟であり、それゆえにロコモーションを抵抗なく自然にカヴァーできたと考えられます。また、これらのロックンロール・カヴァーの存在が、後のグランド・ファンクによるハードロック・バージョンの誕生に影響したのかもしれません。

次回は、そのグランド・ファンク・レイルロードのカヴァーを中心とする70年代以降のロック・カヴァーについてみていきましょう。

古今東西ロコモーション!―56種類のカヴァーを集めてみた―

■その1:世界がヒット曲を共有していた古き良き60年代の巻
■その2:グランド・ファンクで花開く70年代ロックから90年代へ〜でもグランド・ファンクが最初じゃなかった!の巻
■その3:70年代ディスコサウンド〜80年代エレクトロポップの巻
■最終回:何でもありの2000年代、まだまだ世界に広がるロコモーション!の巻
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