2020/01/11

スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

|-|by スポンサードリンク

2013/03/09

ピースちゃんに会ったときの話

私は以前、"今さら風太に会いにゆく、を今さら書く"というエントリーを書いた。風太くんブームが2005年、彼にやっと会えたのがその5年後の2010年8月、そしてそのことをやっとブログに書けたのはさらに1年3ヶ月後の2011年11月だった。

このエントリーの中で私は、"風太くんとピースちゃんには生きているうちにぜひ会いたい"と書いている。風太くんには実際に会うことができて願いの一方がかなったわけだけれど、さてもう一方の願いであるピースちゃんに会える日はいったいいつ来るのだろう?

なーんて書きだしてみたが、実を言うと2011年7月に松山に行く機会があり、そのときすでにピースちゃんと会うことができちゃっていたのである。願いはとっくにかなっていたのだ。ところがその後私の遅筆ぶりに拍車がかかり、何も書けないままあれから1年8ヶ月が過ぎようとしている。いくら考えてもそのときの感想はなかなか言葉では表現できないし、このままお蔵入りでいいかなと思っていた。でもせっかくなのでそのとき撮った写真ぐらいは載せておこうかなとさっき突然思い直し重い腰を上げたしだいである。つまり元々はボツエントリーなので内容もそれなりのものであることをあらかじめお断りしておく。

では始める。

私が初めてピースちゃんに言及したのは2005年1月29日で(ホッキョクグマのピース)、これを読むとおそらくその前日のテレビ番組でピースちゃんに魅せられたものと思われる。ピースちゃんすでに5歳ぐらいのときであったが、生まれてすぐからの成長ぶりがたっぷりと放映されてそのかわいさに魅了されたのはもちろんのこと、育ての親T氏やその家族とが生み出したドラマにも心打たれた。

2011年7月、私はなぜか松山にいた。この千載一遇の好機を逃すわけにはいかない。私は松山を訪れた本来の目的を反故にするほどの覚悟で、砥部町行きのバス乗り場に立っていた。

ひょっとしてバスの乗車券売ってるかも、と思ってバス乗り場のある建物に入って尋ねると、バスの往復乗車券と動物園の入園券がセットになったお得な(どれぐらいお得なのかは知らないけれど)券が売っていて助かった。
松山からバスで揺られること約35分、憧れの愛媛県立とべ動物園に到着した。大都会から来た俺だぜ、四国の…松山の…隣町の…と考えるなかれ、結論を先にいうと、とてもすばらしい動物園だった。動物園だけじゃなく、松山全部がすばらしかったのだがそれはまた別の話である。松山はまた行きたい。
入り口でいきなり、肝心のピースちゃんが"体調不良で出ていないこともある"との掲示に出くわして不安になる。もちろんピースの病気のことは事前に知ってはいたのだが……。
くどいようだがこの写真を撮ったのはピース11歳のときのことであり、重ねていうが私の遅筆のせいで、現在ピースは13歳になってしまっているはずである。それはさておき、さすがとべ動物園の看板娘だけにでかい看板だ。
平和な掲示板。平和で静かだけどどこか物悲しくもある。特に左隅で死んだように眠るピースのぬいぐるみと右端のT氏とのツーショットを描いた絵画がそう思わせる。
ピースの実物大手形。本物とご対面する前から、あの愛らしいピースがこんなに大きくなってしまったという当たり前のことにしみじみとした気持ちとなる。
ピースのてんかんについてはもちろんよく知っていたのだが、
ここまで入念に告知されると、果たして私はただの一人の客として見物させてもらっていいのだろうかという不思議な自責の念にかられる。
いよいよピースちゃん本人とのご対面である。しかし飼育舎に入ってもどうも熊の気配を感じない。体調不良で出ていないのか……と一瞬不安になったが、目をこらすと奥の方に白い巨大な物体が……。
ピースはよく寝ていた。とても深く寝ていた。
ピースの起きる気配が全く無いので、他の動物を見てからまた戻ってくることにした。たとえばラマのべっぴん三姉妹とかである。しかし……
寝ていた。死んだように寝ていた。
ライオンも寝ていた。
コツメカワウソなんてマジで死んでた。暑さで。
私も暑さで死にそうになった。
私の手元には他にもまだ、ほとんど死んでいる他の動物たち、至る所で見つかるセミの抜け殻、素手でとっ捕まえたニイニイゼミの接写など大量の写真が残っているのだが、紙面の都合上断腸の思いで割愛させていただく。さあピースのところに戻ろう。
ピースは起きていた。プールの鎖が外れて水が満たされている。ピースはオレンジの球体をどうにかしようとしていた。
このとき私はピースの意図を理解した。彼女は水に浮かぶオレンジの球体をなんとか水の中に沈めたままの状態にしようと努力しているのだ。
このようにからだで押さえつつ……
水の中に沈め……
沈んだままでいて、沈んだままでいて……
ぷぁーっと息継ぎのために水上に戻ってきたピースちゃん。しかしピースの意図に反して(もちろん私の想像上のピースの意図だけれど)オレンジの球体も水面に戻ってきた。
次の瞬間、ピースは水面に顔をつけたままで全く動かなくなった。1秒、2秒、3秒……。これはなにかおかしい。てんかん発作が起きたのではないだろうか。見物客は私一人だし、誰かを呼びにいったほうがいいのだろうか。…10秒ぐらい経った。実際はもっと短かったかもしれないがとても長く感じた。
ピースは生きていた。
ピースと同じように人工保育で育てられ、ドイツの国民的な人気者に祭り上げられたクヌートは、ピースと同じようにてんかんを患い、てんかん発作で水中に沈み、そのまま溺死してしまった。
ピースも以前、てんかん発作を起こしたまま水中に沈没したことがあったのだが、そのときはピースの育ての親であるT氏がいち早く発見し、一命をとりとめた。
そういった事前の知識が私を不安にさせたのだった。しかし、とべ動物園ではピースの水没事件後、飼育員が監視しているときのみ水槽に水を張るという処置が施されたそうである。だから私の心配は要らぬものであったようだ。
その後ピースはオレンジの球体への興味を急速に失い、まるで温泉につかる人のように静かになって動かなくなった。温泉であたたまるのとは逆に、真夏の暑さの中、水に浸かって涼んでいるようであった。極楽、極楽……。
水に浸かったままピースはまた全く動かなくなった。短い時間の面会ではあったが、私はピースの立ち振舞に、これまで見てきたどのホッキョクグマとも異なる、人間的な雰囲気というものを強く感じた。それはピースが人工保育で育ったという先入観によるものかもしれない。だが、少なくとも私には、繁殖で賑わう円山動物園で見てきたホッキョクグマの野性的な荒々しさや動物的な母性といったものがピースには全く感じられなかった。
私はバスの時間がくるまでベンチに腰掛けながらずっとピースを見つめてぼうっと考えていた。おだやかな表情で目をつぶりながら、いったいピースは何を思っているのだろうか。
脳の片隅に微かに残る母親のぬくもりだろうか。
遺伝子に刻まれたまだ見ぬ北極の風景だろうか。
あるいは高市家と一緒に暮らしたあの楽しかった日々のことだろうか。
私は後ろ髪をひかれる思いでピースの飼育舎を後にした。ピースに会えてほんとうに良かった。けれども、このとき胸に渡来した感情はなんとも表現のしようがない。そうして何も表現の方法が見つからぬまま、あれから1年8ヶ月も経ってしまったのである。

関連サイト

■しろくまピース 公式Webサイト | 愛媛県立とべ動物園

■今日のピース | しろくまピース 公式Webサイト | 愛媛県立とべ動物園

過去の関連記事

■ホッキョクグマのピース(2005年1月29日)

■満1歳を迎えたシロクマツインズ(2009年12月13日)

■雪の練習生(2011年2月16日)


関連記事

2020/01/11

スポンサーサイト

|-|by スポンサードリンク

コメント
誰も(まだ)コメントされていないようですが、いつも拝見しています。
私も松山へは臨●やらなんやらで行きましたが、とてもよいところでした。
では、また。
  • くるたん
  • 2013/03/10 11:41 PM
>くるたん あー、先生ですよね。会ったことありますよね。もう学会でお会いすることもないと思いますが、ブックマークの片隅にでもおいてやっていただけると光栄です
  • スミルノフ
  • 2013/03/15 3:47 PM
コメントは終了しました。

教授御尊顔
教授御尊顔
だまれ!
follow us in feedly
Links
サイト内検索
Googleサイト内検索
懐コンテンツ
喉頭鏡素振りのススメ
スミルノフスイッチ
カテゴリ一覧
過去ログ
Recommend
史上最強カラー図解 はじめての生理学
史上最強カラー図解 はじめての生理学 (JUGEMレビュー »)

ダルビッシュも読んでいる、先生の恩師の著書です。買ってやってくれや。
いちばんやさしい生理学の本
いちばんやさしい生理学の本 (JUGEMレビュー »)
當瀬 規嗣
先生の恩師です。買ってやってくれや。
Others
mobile
  • qrcode
powered
  • 無料ブログ作成サービス JUGEM
PR