2009/07/10

アッー!僕とNが起こした多田野の奇跡

多田野01

札幌ドームです。

多田野02

なんとこんなところにも円山動物園のホッキョクグマの双子が。

という感じで、いつもの動物園ネタのようにホッキョクグマの話にでも持っていくつもりだった。

僕がドームに着いて最初に双眼鏡でまず見たのが、このホッキョクグマの双子をキャラクターにしたトドックの看板だった。これをネタに今晩どう話を膨らませるか考えなきゃならん、と一瞬考えたそのすぐ後だった。僕はトドックの上によく知った顔を見つけて驚いてしまい、そんな考えはどうでもよくなってしまった。

それは職場の同期のNだった。ずいぶん上等な席で観戦していやがる。僕は双眼鏡で観察しながらNの携帯を鳴らしたが、一度は迷惑そうに無視されてしまった。しつこくかけ直すと、Nはやれやれという感じで仕方なく自分の携帯を手にし、そして電話の主が僕であることに驚いた顔をした。

内野席の前方に座っていた僕の位置をなんとか確認してもらい、僕とNは大きく手を振りながら挨拶をかわした。

多田野03

僕とNを結んだ数百メートルの直線の中点あたりには、多田野がいた。多田野は、今季の多田野にしては考えられないような快投を続けていた。どうして今、多田野に奇跡が起きているのだろう。

僕はある因縁を感じていた。

僕とNの共通点は、オハイオ州のクリーブランドで働いていたことである。僕たちはクリーブランドには人並みならぬ思い入れがある。そして多田野が初めてプロ契約をかわした球団は、クリーブランド・インディアンズだった。多田野は普通にドラフトで指名されて日本の球団に入ってしかるべき実力者だった。ところが、「アッー!」事件のせいで(正確にはその事件が原因かどうかは僕にはよく分からないのだが)大学卒業後は日本球界から指名を受けることはなく、おそらく傷心のまま渡米した。そして多田野を拾ってくれたのが他ならぬクリーブランド・インディアンズだったのである。だから多田野もクリーブランドには並々ならぬ思い入れがあるはずだ。今日の多田野は、僕とNが左右から発射しているクリーブランド・パワーによって輝いている。僕はそう確信した。

多田野04

僕はファイターズの誰が打とうが、そんなことはもうどうでもよかった。今日の多田野はノーヒットノーランという奇跡を起こすに違いないという確信が湧いていた。7回にファイターズが2点を追加したとき、ドームの興奮をよそに、僕は余計なことをしてくれたと思った。急に攻撃の時間が長くなると投手はリズムを崩しやすいし、リードが広がったことで緊張感が途切れる。ダメ押しの追加点はノーヒットノーランの敵なのだ。案の定、8回の多田野は立て続けにファーボールを出した。たまらず吉井コーチが出てきたとき、これはノーヒットノーランはおろか、逆転もあり得るとさえ思った。普通ならここで絶対打たれる。だが多田野はギリギリで踏ん張ったのだ。間違いない。明らかに僕とNのクリーブランド・パワーが多田野に通じている。

多田野05

だが結局、多田野は9回ツーアウトで迎えた最後のバッターになるはずだった打者にヒットを打たれた。ドームには緊張の糸が切れたようなため息が流れた。僕の、僕しか楽しくない妄想話もここで終わりである。

多田野06

多田野はノーヒットノーランをあと一人で逃したことを少しも悔やんでいなかった。ヒット性の当たりもアウトにしてくれる野手のおかげだと言った。僕は多田野は正直な気持ちを話しているんだと思った。こうして日本で喝采を浴びながら投げることができる日がきたことを幸せに感じているに違いないのだ。多田野はもうTDNじゃないのだ。

試合後、Nは多田野とハイタッチしていた。ふん、くやしくなんかないぞ。僕は野球になんか興味ない。そのうちホッキョクグマとハイタッチしてやるさ。

注:このエントリーはアッー!ホッキョクグマ! - SuemeSublogに加筆修正し、後日当サイトに転載したものです。


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2024/03/15

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